女神ヘカテの神殿にて、瞬は眠りの神ヒュプノスから一組の指輪を渡される。 実はハインシュタイン城に到着するまで、指輪は二つともジュネの指にはめられていた。 ところがハインシュタイン城の一室で休んでいたとき、どういうわけだか冥闘士たちが様子を見にくるのである。 そのタイミングはいつも、瞬がジュネの事が心配で頬や髪に触れているときだった。 「何か用ですか?」 見られたと思いドキドキしながら尋ねると、彼らは 「特に変わったことはないか」 と、瞬に言う。 しかし部屋には入らない。 だから最初の三人くらいは我慢できた。 もしかすると城内で何かあったのかもしれない。 そうも考えるが、四人目からはさすがに苛立つ。 (まさか本当にジュネさんをエリュシオンのニンフだと思って、僕を警戒しているんじゃ……) 瞬は彼女の指にはめた二つの指輪をいったん外した。 |
ドアの方を確認するが、冥闘士たちが開ける気配はない。 |
しばらくしてバジリスクの冥闘士シルフィードが部屋に様子を見に来る。 このとき瞬は、ジュネの美しい髪に触ろうとしていたところだった。 「特に変わったことはないか?」 その問いに瞬は、 「はい。大丈夫です」 と、にこやかに答える。 とにかく指輪のおかげか、冥闘士たちが様子を見に来ようとも大丈夫な気がした。 |
ところが自分が席を外したわずかな時間に、バルロンの冥闘士ルネが部屋に入ってきたのである。 そして、真っ直ぐジュネの傍まで近づいたのだ。 彼はこの現場を見てしまったとき、いつもの冷静さを失った。 「ジュネさんをどうするつもりだ!」 ネビュラチェーンが迷うことなくルネを攻撃しようとする。 そこへ間一髪で他の冥闘士がルネを部屋の外へ連れ出したのだった。 (あとで問題になったって、かまうものか!) やはり冥闘士たちは油断も隙も無い。 そう確信した瞬だった。 |