海のそばで、二人の魔戒騎士が剣を交える。
一人は黄金騎士牙狼の称号を持つ冴島鋼牙。
もう一人は銀牙騎士、涼邑零。
彼らは最初の数分で、この勝負がおもしろいことになると理解した。
こうなると魔導輪たちの方は退屈だったりする。
止めたって無駄な二人なので、ザルバとシルヴァは勝手に情報交換をしていた。
『──まぁ、大ざっぱにいうと時空を無理矢理越えたから、俺様たちの周辺の空間が不安定なんだそうだ。ということで、他の奴らへの連絡は待ってくれよ。一番に会いたかったカオルにも近づけないんで、鋼牙のヤツ気が立っているから』
黄金騎士牙狼の相棒は言いたいことを言う。
「うるさいぞ、ザルバ」
彼の眉間のしわが一層深くなる。
すると魔導輪シルヴァが『あら、それは可哀想ね』と言った。
『でも、絶狼も似たようなものよ。サバックで優勝したあと、あの部屋で大暴れしたから、二晩くらいは一人で大人しくしていてくれって言われているのよ』
『何かあったのか?』
『あの部屋での侵入者退治でしょ。回復薬を服用したらさっさと体を休めろって厳命されているの。場合によると思った以上に体が疲弊しているはずだからって』
ある意味、異世界で戦っていたようなものだった。鋼牙とは違う意味で。
「でも今、鋼と剣を交えなかったら、次はいつになるか分から分からないだろ」
零は嬉しそうに言う。
鋼牙はある可能性を冷静に口にした。
「そうだな。お前なら、時空の渦に巻き込まれても大丈夫だろう」
この返事にザルバは大笑いをした。
零は苦笑いをする。
「酷いヤツだな。俺、傷付いたから、カオルちゃんに夜のデートで慰めてもらおうっと」
そう言った瞬間、彼は鋼牙の攻撃が急に鋭くなったことに気が付く。
「鋼牙! 今、本気で殺そうとしただろ!」
「そんな事はない」
シルヴァは二人の会話に本気で呆れていた。
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