その頃、別の場所ではレオがシグトと一緒に目的の場所へ向かっていた。途中にはこの空間に巣くう奇妙な生命体が襲いかかる。それらの体には一枚の界符が張り付いていた。
(なんてことを……)
レオはそれが何なのか、すぐにわかった。界符一枚で生き物を変容させる。それは禁断の技術の結晶だったのだ。
「あっ……」
邪魔者を倒していくうちに、急に空気中に漂う魔が濃くなったような気がした。
「どこかが封印に成功したみたいですね」
シグトがレオに話しかける。
「シグトさん、これからどんどん魔の濃度が高くなります。気をつけてください」
「はい!」
レオは周囲を注意深く見る。
(封印が成功すれば、それが今度はこちら側の結界になる)
その中にある魔の濃度が、今度は時空の違うところにいる敵をこの地に引っ張りだしてくれる。
ただ、このときに倒せればいいのだが、完全に倒すことが出来なければ敵は零のいる場所に移動するだろう。
(なんとかくい止めないと……)
しかし、ここは敵地ゆえ、レオは分の悪さも理解していた。
『レオ、ウルバから連絡だよ。なんだか様子が変らしい』
エルバの突然の言葉にレオは立ち止まる。
「ワタルさんに何かあったのか!」
すると四万十ワタルの声が魔導輪を介して聞こえてきた。
「レオ、ホラーたちの様子がおかしい」
「どうしたんですか」
「光の獣とか白き聖なる獣が現れたとかいって、そいつを追っていった」
そのため簡単に封印が完了したという。
(光の獣? 白き聖なる獣??)
「霊獣がいたのですか!」
思いつく存在を口にしたが、いくらなんでも霊獣はいない気がする。いたら調査段階でオリグスと接触しているだろう。
では、古い時代にいたかもしれない存在だろうか?
「レオさん!」
シグトの声にレオは前を見る。そこにいたのは一人の魔戒法師。
『──』
彼は白き聖なる獣は最高の実験素材だと笑った。
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