鋼牙とザルバは閑岱に向かうはずだった。
しかし、閑岱は歩いて簡単にいけるという場所ではない。
時間の短縮には、どうしても魔戒道を使った方がいい。
ただ、時空の狭間に入り込んでいる鋼牙が魔戒道を利用して大丈夫なのかという問題がある。
「邪魔が入れば、そのときは切る」
『おい、アッサリと言うな!』
ザルバは思いっきツッコミを入れたが、閑岱も元老院も番犬所も魔戒道を使う危険度は変わらない。
魔導輪は'急がば回れ'という何処かの格言を思い出したが、そのときには既に、彼の相棒は魔戒道に足を踏み入れている。
『鋼牙! おい!!』
慌てると魔導輪も次の言葉が出なくなるらしい。
さんざん騒いだ後、彼はようやっと次の言葉が出た。
『あきらかにいつもの魔戒道と違うぞ〜』
ザルバの声は虚空に吸い込まれたのだった。
ところが彼らは途中で急激な力の存在に引っ張られた。誰かに腕を掴まれて放り投げられたような感覚。
出口として吐き出されたのは、何処かの森の中だった。ただし、周りには枯れ木が多く、少し離れたところから葉の茂った木が生えている。
目の前には光の糸と魔戒文字が現れては消える不気味な洋館。
近づいてみると、火花が飛び散り鋼牙は自分の周りの空気が震えたことに気が付く。
「結界だ」
しかも、時空の狭間にいる自分にまで影響を与えるというのは、そもそもこの場所は空間が不安定になっているのかもしれない。
『それじゃ、もしかしたらここに俺たちが元に戻れる方法があるかもしれないな』
「あるいは……」
鋼牙は黙る。逆に時空の果てに飛ばされるかもしれない。
洋館を見上げていると、背後から人の声が聞こえてきた。とっさに彼は木の陰に移動し、気配を消す。こういう行動が必要なのかはわからないが……。
やってきたのは、二人の魔戒剣士と一人の魔戒法師のだった。
親しいわけではないが、破滅の刻印に苦しめられていたとき見かけた気がする。
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