『おい、ここは英霊の塔の中じゃないか!』
鋼牙も自分が出てきた場所の意外さに驚く。
しかし、ここに入ったのに英霊たちの声が聞こえない。
「何かおかしい。とにかく外に出るぞ」
彼は出口に近づくが、扉は動かない。
それどころか、彼はそのまま扉をすり抜けてしまったのである。
手に持っていたはずの鎖も今はない。
『もしかして時空の狭間に落ち込んだのか?』
ザルバの言葉に鋼牙は駆け出す。冴島邸に行けば、家族同様の執事がいる。彼の反応で事態を認識しないとならない。
『でも、シグマとの戦いで家はブッ壊れちまっただろ』
「ゴンザなら同じところに家を建てる」
鋼牙がいつ帰ってきてもいいように。
そしてしばらくすると、冴島邸らしきものが見えてきた。
何故、らしきものかというと建設途中だから。そこには大勢の職人たちが忙しく動いていた。
会話はごく普通に聞こえるが、誰も鋼牙の存在に気がついていないらしい。
何しろ彼が工事中の家の前に立っても、誰も声をかけたり注意をしない。
『鋼牙、かなりまずいぞ』
「ならば元に戻るまでだ」
そしてこのとき、彼の耳に懐かしい声が聞こえてきた。
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