君の隣にいるために 番外編 2 その18
『木』は朝日の中で静かに光に還ってゆく。 その中で、烈花が笛で英霊達への鎮魂歌を奏でる。 過去に犠牲となった多くの者たちの魂を慰めることが出来ればと……。 カオルはその光景を見ながら、何故か涙が溢れてくるのを止められなかった。 「綺麗な朝日だね」 「そうだな……」 レギュレイスの亡霊はもういない。 鋼牙はカオルの肩を抱き寄せた。
そして烈花の演奏が終わったあと、鋼牙たちから少し離れたところでは……。 「綺麗な羽だねぇ」 邪美は翼から二枚の白い羽を渡された。 彼は白い守護役から『嫁に一つ渡せ』と言われていたのだが、どうしてもその説明が出来ない。 「鈴とわけていいのか?」と言われて、一瞬、それもありかと考えたが、今度は鈴からダメだしされた。 「こういうのは夫婦で持つの!」 そういう鈴もまた二枚の羽を持っていた。 どうやら今回の一件で大変な目に遭わせたお詫びということで、別の守護役がやってきて桃色の羽をくれたらしい。 もちろん烈花も貰っていた。こちらは淡い紅色である。
レオは地面に座り込んだまま、『木』が朽ちてゆくのと、それを美しい音色で送る烈花を見ていた。 手には紺色に近い紫色の羽が、やはり二枚。 (お嫁さん……って) そのような人に渡す日が来るのだろうか。 『ちゃんと報告出来たらいいねぇ』 エルバが溜息をつく。 思わずレオは苦笑いをしてしまった。
「それじゃ、俺、戻るよ」 これ以上居続けると、閑岱の人たちにバレかねない。そうなると東の管轄の神官に今回のことを説明しないとならなくなる。 それは非常に面倒なことだった。 零は老守護役がくれた燻し銀の色をした二枚の羽を持って、その場から立ち去る。 「じゃぁな! 里に今回のことを報告するときは、俺のことは居なかったことにしてくれよ」 その後ろ姿は、どこか楽しそうだった。