君の隣にいるために 番外編 2 その15
一方、守護役たちの世界にいた邪美は、大変な事態に遭遇していた。 (出られない……) カオルたちがいたであろう部屋。そこから邪美は出られなくなってしまったのだ。 これには守護役たちも驚く。 ――ココハ『木』ノ中心。 ゆえに、もっとも結界の力が強いという。 この説明に邪美はあることを思い出す。自分もまた魔戒樹の中で長い間眠っていた。 (これは……あたしが木の作る結界と親和性が強いってことかい!) こうなると邪美一人では脱出は出来ない。 そして邪美が外へ出るためには、この『木』の世界を壊す覚悟をしないとならない。 (だから、あたしはすんなり入れたのか……) 外に知らせるべきか。 このとき彼女は'破滅の刻印'をくらった時の翼や鋼牙たちの気持ちが分かるような気がした。
空間に激しい気流を起こしながら、それは合体を完了させる。 このとき鋼牙は、三体融合を起こした第一兵器の胸であろう箇所に、場違いなまでに美しく輝くクリスタルに目を見張る。 「カオル!」 そのクリスタルの中にカオルが身を縮こませて眠っているのだ。 そして魔界竜のカオルが何度もカオルの上着とクリスタル内部の空間を出入りしていた。 「カオルちゃんを連れさらったのはあいつか!」 零が叫んだとき、敵の顔にあのレギュレイスが人間形態だったときの顔が現れる。 しかし、鈴の言うとおり、どこか別人っぽい。 『鋼牙、お前はどう思う?』 「あれは、守護役がレギュレイスの化粧をしているのだろう」 どういう意図でなのかは、さっぱり分からないが……。 すると鋼牙の脳裏にある声が聞こえてきた。 今まで自分に力を貸してくれている守護役が、初めて話しかけてきたのである。 『──』 守護役は変貌を遂げた対レギュレイス兵器の動きを止める方法があるという。 「どうすればいい」 鋼牙が尋ねたとき、レオが到着した。 それと同時に敵側が暴れ始める。 特に鷹麟の矢もどきを持っているレオが集中的に狙われた。 ただし、レオに協力しているのは守護役の中でもトップクラスの機動力を持つ者なので、そう簡単にやられたりはしない。 ただ、素早く動く度に、彼は体力が削られていくような感じがする。 レオが何とか鋼牙に問題の矢を渡すと、今度は鋼牙に狙いが定まる。 このとき、鋼牙はザルバを通じて三名の魔戒騎士たちにあることを頼む。
「守護役の言う三重詠唱を頼む!」 この単語に対して、各の守護役たちが協力している魔戒騎士に何のことか説明をする。 簡単に言うと詠唱をする者が目的の存在を中心にして三つの場所に立ち、同時に専用の呪文を詠唱するのである。 ただ、これは守護役たちの技であって、魔戒騎士たちが使えるわけではない。 そしてこの詠唱は集中力を必要とするので、その間に対象物の攻撃を食らうと再び掛け直すのに倍くらいの時間が必要になるのだ。 魔戒騎士たちには守護役たちが詠唱をしている間、とにかく攻撃が当たるのを避け続けてほしいということだった。 その説明が終わるや否や、翼が魔戒槍を横に払う。 すると光の鳥たちが粒子となって翼、零、レオの足下に光の輪を作る。 「ならば鋼牙、お前が決着をつけろ」 彼らの足下に古き言葉で表された魔法陣が出来る。 零とレオの足下にも同じように出来た。 そして三人は鋼牙の交戦によってその場で足止めをされている対レギュレイス兵器に接近。 効果的な場所にたどり着くと、守護役たちは速攻で詠唱を始めたのだった。
空間に出没した光の三角形は、その内部にある存在を固定し始める。 上空からは色々な光の粒子が落ちて、対レギュレイス兵器の融合した体に降り積もり、輪郭を光らせる。 鋼牙の目の前で、それは大きく体を仰け反らせた。 ──頭ヲ……狙エ。 再び謎の声が彼らの脳裏に響く。 「誰だ!」 鋼牙はその正体を探ろうとしたとき、答えたのは守護役の方だった。 彼は、今の声は自分たちの目の前でレギュレイスになろうとしている友だと告げた。