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君の隣にいるために 番外編 2 その12

 鋼牙、零、翼の三名は鎧と魔導馬を召喚する。
 しかし、この空間は魔界とは異なるらしく、鎧に制限時間が発生していた。
 それでも三人は連携して、零がなんとか機能停止の部品を押す。
 すると第一の兵器が突然、その場に発生した穴に落下した。
 あっという間の出来事で、誰も追いかけることができなかった。

「機能停止をしても、簡単には破壊されないということか……」
 翼は悔しがる。
 しかし、レオは「大丈夫です」と言う。
「第二か第三の兵器の許にあれは現れます」
 意図的に狙うつもりはないが、システムがその機能を持っていれば、兵器たちは一つになろうとする。
「設計図に書いてあったのか?」
 零は首を傾げる。
「文字で書いてあるのではなく、そういう意図を設計図に組み込んでいるのです」
 魔導具作りに長けた青年は、そう断言した。

 そして別の場所にいた第二の兵器はというと、侵入者たちがただの人間でないことを途中から察知したのか、攻撃と撤退を細かく繰り返す。
 鎧と魔導馬の召喚が制限時間付き状態である彼らには、非常に不利な戦いだった。
 しかし心滅獣身化などしたら、彼らも自己制御が利かないのだから最悪の状態を引き起こす。
 そのうち第二の兵器との戦いの最中に、黒くて大きな影が上を横切る。
 それは上に向かおうとしていた。
「鈴を直接狙うつもりか!」
 翼は叫んだが、今度は第二の兵器が三人をこの場から逃さないように動く。
 レオはとっさに外に向かって駆ける。
 とにかく最短の距離を頭の中で計算した。
 確実に間に合わないと思いながらも、諦めるわけにはいかない。
 地上には守らなくてはならない人たちがいるのだ。

──鎧ヲ召喚セヨ!

 突然、誰かの声が脳内に響く。
 四人の魔戒騎士たちは一斉に鎧を召喚した。 


 地上では『木』が火花を散らす。
 そして周辺の大地では魔法陣のような模様がグニャグニャと動く。
 烈花と鈴は明らかに危険が迫っていることが分かった。 二人は魔導筆を構える。
 大地から異形の竜が首を出す。
 そのとんでもない大きさに二人は最初、それが何であるのか分からなかったくらいである。
 それと同時に、空からは大きな翼を持った何かが二人と竜の首の間に舞い降り、竜に向かって剣を振るった。異形のものが頭だけ少し後退する。
 そして味方であろう存在の背にある金属的な翼が、魔法陣の光に輝く。

「間に合いましたね」
 空から現れた者の声が聞こえたとき、烈花と鈴はとても驚く。
「レオ!」
「レオさん!」
 魔戒騎士たちの鎧に翼など無いはずだが……。
 再びレオは剣を振るう。
 竜は怒りの形相になった。

「レオ、あとは任せろ!」
 その声と共に、真っ白い翼を持った魔導馬が、真っ白い魔戒騎士を乗せて烈花と鈴の頭上を悠々と飛び越える。
 しかも、彼女たちのいる場所の後ろの森には多くの光の鳥たちがいた。
「にぃ!」
「あの魔導馬はどういうことだ! でも、なんでレオも心滅獣身化しないんだ」
 するとレオが警戒を解かないまま、二人に説明した。
「守護役の皆さんが、力を貸してくれました」
 そのため鎧が変化したという。
 結界内は彼らの影響下ということで、鎧の負の性質もまた封じられてしまったのだ。
 この世界に古くからいる神聖な鳥系の一族は、無茶苦茶な手段を実行するだけの力を持っていたようである。
 翼は魔戒槍を持ったまま、異形の竜と睨み合う。
 魔導馬・疾風に大きな翼があるが、白夜騎士の鎧はそんなに大きく変貌してはいない。ただ、腕や足のところに羽根の模様が増えたくらいだった。


 同じ頃、鋼牙と零もまた美しい翼を持つことになった己の魔導馬に乗って、第二の兵器と戦っていた。
 召喚の制限時間がなくなったので、兵器の方が苦戦しつつある。
 攻撃も先ほどよりは鋭くなくなった。
 翼を持った魔導馬・銀牙は敵の攻撃を難なく避ける。守護役の力の恩恵なのか、短い距離なら瞬間移動も可能となった。
 鋼牙の乗る轟天もまた黄金の翼を煌めかせて、敵の攻撃を避けつつ主(あるじ)の攻撃をサポートする。
(俺に力を貸してくれているの……爺さんだろ)
 零は心の中で問いかける。

──気づかれましたか。

(ありがとう)
 零はそれだけをいうと、戦いに集中することにした。 


「あれっ? どうしたの??」
 カオルは相手の姿が少しだけ変化したことに気がつく。
 鳥の影は囀る。何か楽しそうである。
(顔が白くなった……)
 カオルは首を傾げた。