「カオルさ〜ん。邪美がにぃのお嫁さんになってくれるって〜。よかったぁ〜〜」
嬉し泣きをしながら鈴がカオルに報告する。
「待て、鈴。俺は返事をもらっては……」
「にぃが諦めちゃったらどうしようって、ずっと心配だったんだよ。魔戒騎士って自分のことに関してはひとりで勝手に覚悟を決めているけど、家族とか恋愛については自分が我慢すれば全て丸く収まると思っているんだから!」
鈴の説教に他の魔戒騎士たちの方が、痛いところを突かれたという顔になる。
思わずカオルが拍手をしていた。
翼も何か思い当たることがあるのか黙っている。
「邪美姉、この際年貢を納めてください」
怒濤の如き恋愛事情の展開について、烈花も鈴の後押しをする。
邪美はレオの方を見る。
「どこかの扉が閉まると、別の扉が開くものだねぇ」
その艶やかな笑顔をレオは綺麗だと思った。
「そうですね」
つられて彼も笑顔を見せる。ちょっと作り笑いっぽいが……。
改めて邪美は鈴の方を向く。
「それなら、翼を貰うよ」
「うん! にぃを貰ってください。返品は不可!」
何かが違うと言いたくなるような会話に翼が文句を言う。
「おい、何だその言い方は!」
「いいの! にぃは邪美にあげたんだからね!」
そう言いながらも鈴の目から涙が零れる。
「にぃ……、邪美、おめでとう……」
鈴は声を上げて泣き出した。
「わぁ〜、おめでとうございます」
カオルもまた貰い泣きし、鋼牙は眉間に皺を寄せながら翼に言う。
「ということは、これから邪美に関しては翼に抗議すればいいんだな」
抗議が前提かよ! と零は心の中でつっこみを入れたが、表情には出さず酒を飲む。
『おい鋼牙、素直におめでとうと言ってやれよ』
ザルバが相棒の対応を解説した。
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