「いきなり魔戒剣を突きつけるなよ。怪我をしたらどうするんだ!」
「お前がカオルのそばに近づくからだ」
最初はこのような喧嘩腰の会話だったのだが、カオルが風邪をひいて寝込んでいると分かると、零の様子が変わった。
「カオルちゃん、もしかして空きっ腹で寝ているんじゃないのか」
その剣幕に鋼牙はゴンザが後から来ると言ったが、零は鋼牙にケーキの箱を渡すと「待っていろ」と言って出かけてしまう。
そして数分後、スーパーマーケットの買い物袋を持って現れたのだ。
「鋼牙! カオルちゃんは食欲があるのか聞いたか!」
「……あまり食べたくはないと言っているが」
すると零は台所を借りると言って家の中に入ってしまう。
「おい、零」
「空腹で薬なんか飲ませられないし、ゴンザを待っているくらいなら、粥でも雑炊でも作ってやれよ。今は便利なものもあるんだから」
そう言ってレトルト食品を袋から出しながら、テキパキと動く零は非常に手慣れていた。
『牙狼、絶狼は慣れているから心配することないわ』
自分に台所仕事が出来るわけないので、鋼牙はカオルの部屋に戻る。
「零くん?」
「そうだ」
「なんだか、悪いなぁ」
カオルは少し大きな声を出す。
「ごめんね〜。零くん」
するとその声が聞こえたのか、零から返事があった。
「これ食べて、早く元気になってよ〜」
「うん!」
また起きあがろうとするカオルを、鋼牙はまたまた横にさせる。
その様子にザルバはにやにやしていた。
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