森の中は結構静かだ。
だが、やはり何となく違和感を感じる。
ところで、出発前にレオを見る魔戒騎士と魔戒法師たちの目が、なんだか同情的に見えた。
大丈夫、鋼牙はいきなりレオを抹殺したりはしないはずだ。
『閃光騎士狼怒もイヤな役を振られたわね。でも、エルバったら狼怒が可愛いのね』
シルヴァの言葉に俺は首を傾げる。
「何で?」
『何でって、大きな戦いの後でみんなが心を一つにしているときに黄金騎士牙狼の嫁が御月カオルだと言っておけば、あとで元老院や番犬所のろくでなしどもが何かを謀っても、みんなが助けてくれるわ。そしてエルバが褒めたのよ。しばらくは御月カオルと狼怒の周りは静かでしょ』
「そんなものか?」
まぁ上手くいくかどうかは分からないが、多少なりとも防波堤にはなるかもな。
『狼怒自身は自分で嫁を見つけて、自分で今回の一件の事情を己の言葉で相手に説明すればいいのよ。それくらいの努力もできないんじゃ、相手に失礼よ』
それをレオにやれと? まぁ、あれも男だ。なんとかなるだろう。
「それなら俺の周りはうるさくなるかな〜」
『絶狼は無理。うるさくして欲しかったら、そのチャランポランなところをどうにかしなさい』
うわ〜〜っ、キッツイなぁ。
「まぁ、俺にはシルヴァがいるからなぁ」
『さっさと仕事をしなさい。来るわよ』
シルヴァの言葉通り、珀岩の谷には変異種が隠れていた。今まで見てきた素体ホラーに似ているが、やっぱりどこか違うように見える。
よぉ〜し、全滅させてやるぜ。
俺は二振りの剣を構えた。
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