殺風景だった森に、柔らかな光が降り注ぐ。辿り着いてみると、数体の真っ白い霊獣が鋼牙とカオルちゃんを取り囲んでいる。
おいおい、周辺の空間がおかしなことになっているぞ。森の姿が歪んでいる。
これは力ある存在が狭い空間にたくさんいることによるものだな。
「零さん、これはどうしたことですか!」
「見ての通りだよ。今回の親玉は霊獣をたちを縛り付けていたワイヤーだ」
誰が作ったのか知らないけど、とんでもないことをしでかしてくれたよ。
「ワイヤー……ですか」
「霊獣を狩っているという奴らが開発したのか、それともそういうものに取り付く物の怪がいたのか、ホラーの仕業なのか全然わからないけどな」
何しろ鋼牙が綺麗さっぱりと粉砕したみたいだから、物的な手がかりが何一つない。
俺がため息をついたとき、隣でゴンザがボロ泣きしていた。
「大河さま、りんさま。鋼牙さまがカオルさまと霊獣たちの前で神聖婚を行っております。この倉橋ゴンザ、これでお二人にいつでも胸を張ってお会いできます」
おいっ、それは冴島家の家事に多大な被害を及ぼすから、やめたほうがいい。あいつらの子供の食生活を守れるのはゴンザ、お前だけだ。
それにしても神聖婚って……。
そういわれれば、鋼牙は白いコート姿だしカオルちゃんも白っぽい服装だ。そうに見えないこともない。
なにやら花嫁は霊獣たち相手に何かしゃべっているみたいだが、どうにも空間の様子が緊張をはらんでいる。
何を喋っているのかよく聞こえないが、近づかない方が良さそうだ。
「証人は僕たちだけみたいですね」
「色気のない立会人だが、仕方ないだろ」
一生に一度、見れるかどうかわからないレベルの婚礼に女性の招待客はナシか……。
そう思ったとき、俺の隣に静香がいた。その表情は、花嫁を見ることが出来て嬉しそうだった。
そうか、静香も立ち会ってくれるんだな。
あいつら、ようやっとまとまったよ。
本当にこっちをヒヤヒヤさせるバカップルで苦労したんだ。
不意に霊獣たちが動き出した。一体一体が鋼牙とカオルちゃんにすり寄ると、そのままこちらに向かってくる。
えぇぇぇっ!
そして霊獣たちは俺たちの横をすり抜けて、空のかなたへと去っていったのだった。
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