帰りの道はどこをどう通っているのかわからないけど、ときどき鋼牙が立ち止まってくれる。
けれどもそういうときは零くんがいないし、零くんが私たちを呼ぶときは鋼牙の姿が見えない。
どうしてとレオくんに聞くと「邪気の気配がありますから、様子を見て貰っています」ということだった。
「ねぇ、レオくん」
「なんですか?」
「手負いのホラーがいるって、鋼牙たちは退治できなかったの?」
そんな中途半端なことをする鋼牙たちとは思えないのだけど。
「手負いというのはイメージ的なものです。実際はギャノンに抑えつけられて、表に出なかったホラーという感じに受け取ってください」
「?」
『お嬢ちゃん、ホラーにもいろいろな種類があるんだよ』
レオくんの指輪が喋った! やっぱり魔導輪だったんだ。
「エルバ!」
それにしてもレオくん、慌てている。
『大丈夫、余計なことは言わないよ。とにかくお嬢ちゃん、ホラーといえども単一の性質ではなかったりするんだよ』
「そうなんですか?」
『今回はギャノンに近しいホラーたちは殲滅出来たけど、異なった性質のものがこちらの知らないうちに発生していた場合、そいつ等は無事である確率が高い。そういうことだよ』
進化とか突然変異のようなものかと尋ねたら、そうとのこと。
その新しいタイプのホラーはギャノンには弱かったかもしれないが、では魔戒騎士や魔戒法師たちにも弱いのかというと、それはわからない。何しろまだ退治したことが無いのだから……と言われた。
「こういう大きな闘いの後というのは注意しないと、とんでもないホラーの誕生を許してしまうのです」
私はこのとき鋼牙が背負っているものの重さを改めて知った。
果てなき闘いの日々。その中で私は彼に何かをしてあげられるのだろうか?
『お嬢ちゃん、心配しなさんな』
魔導輪エルバ(さん?)は私の不安を察したのかな。優しい言葉をかけてくれた。
『あんたはあんたのままでいればいい。何しろ……』
ところが言葉の途中でレオくんが彼女の遮った。
「エルバ!」
なんだかかなり慌てている。何なの? 何なの??
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