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五ツ色の絵物語 番外編というか…… その2

 帰りの道はどこをどう通っているのかわからないけど、ときどき鋼牙が立ち止まってくれる。
 けれどもそういうときは零くんがいないし、零くんが私たちを呼ぶときは鋼牙の姿が見えない。
 どうしてとレオくんに聞くと「邪気の気配がありますから、様子を見て貰っています」ということだった。

「ねぇ、レオくん」
「なんですか?」
「手負いのホラーがいるって、鋼牙たちは退治できなかったの?」
 そんな中途半端なことをする鋼牙たちとは思えないのだけど。
「手負いというのはイメージ的なものです。実際はギャノンに抑えつけられて、表に出なかったホラーという感じに受け取ってください」
「?」
『お嬢ちゃん、ホラーにもいろいろな種類があるんだよ』
 レオくんの指輪が喋った! やっぱり魔導輪だったんだ。
「エルバ!」
 それにしてもレオくん、慌てている。
『大丈夫、余計なことは言わないよ。とにかくお嬢ちゃん、ホラーといえども単一の性質ではなかったりするんだよ』 「そうなんですか?」 『今回はギャノンに近しいホラーたちは殲滅出来たけど、異なった性質のものがこちらの知らないうちに発生していた場合、そいつ等は無事である確率が高い。そういうことだよ』
 進化とか突然変異のようなものかと尋ねたら、そうとのこと。
 その新しいタイプのホラーはギャノンには弱かったかもしれないが、では魔戒騎士や魔戒法師たちにも弱いのかというと、それはわからない。何しろまだ退治したことが無いのだから……と言われた。

「こういう大きな闘いの後というのは注意しないと、とんでもないホラーの誕生を許してしまうのです」

 私はこのとき鋼牙が背負っているものの重さを改めて知った。
 果てなき闘いの日々。その中で私は彼に何かをしてあげられるのだろうか?
『お嬢ちゃん、心配しなさんな』
 魔導輪エルバ(さん?)は私の不安を察したのかな。優しい言葉をかけてくれた。
『あんたはあんたのままでいればいい。何しろ……』
 ところが言葉の途中でレオくんが彼女の遮った。
「エルバ!」
 なんだかかなり慌てている。何なの? 何なの?? 


 レオくんに何か隠しているのか尋ねようとしたら、目の前に急に鋼牙が現れた。
 びっくりしたぁ〜。
「レオ、カオルを少し急がせる」
「わ、分かりました!」
 そして鋼牙はいきなり私を……、か、担いだぁ〜〜〜。
「いあやぁぁぁ」
「カオル、舌を噛むから喋るな。頭も上げるな」
「ゴンザさんはこっちです。僕に付いてきてください」
「はい!」
 このとき零くんの声が聞こえた気がしたけど、とにかくあまりのことに状況が分からないまま私は鋼牙に運ばれたのだった。

 怖くて目をつぶっていたから何がどうなっているのか分からなかったけど、鋼牙から地面に降ろされたとき、そこは森を抜けて広場みたいな場所だった。
「カオル、俺を信じろ!」
「う、うん」
 信じる、鋼牙は絶対に私を守ってくれるって!

 そして森から現れたモノは、私には何が何だか分からなかった。
 分かったのは、黄金騎士となった鋼牙の剣によってあっと言う間に切り裂かれたこと。

 本当にあっと言う間だった。

 うん。


 このあとに起こった出来事は、鋼牙から絶対に喋ってはダメ、記録に残してもダメと言われてしまう。
 一応抗議したけど、ダメだっていうんじゃ仕方ないよね。
 でも、私は忘れないよ。
 本当に絶対に忘れないよ。