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五ツ色の絵物語 エピソード0 (笑)
カオルちゃんからみた、ギャノン戦直後の話です


五ツ色の絵物語 番外編というか…… その1

 鋼牙たちがギャノンとかいうホラーを倒したらしい後、魔戒法師の皆さんが難しい顔をして相談事をしていた。
 今や珀岩の谷は先ほどまでの不吉な黒い気配は消えて、とても静かになっている。
 何かあったのかな? 私とゴンザさんをチラチラみている魔戒法師さんもいる。
 もしかして私たちをどう帰そうか相談してくれているのかな?
 体力は結構あるほうだけど、あらゆる手段が使えた行きと違って、今の魔戒法師さんたちは魔導筆を失っている。やっぱり術のレベルに差がでるのかな? 歩きっぱなしになるのを覚悟した方が良いかも。

 そんなことを考えていたら、急に周辺が明るくなった。
 そして光が消えたとき、鋼牙たちがそこにいた。
「鋼牙!」
 私は嬉しくなって彼に抱きつく。
「カオル……」
 その優しい声に、私は恥も外聞もなく泣いた。
 嬉しい、嬉しい、嬉しい。
 ところが事態は楽観できる状態ではないことを知らされた。

「この辺にはまだ手負いのホラーが残っているかもしれない。ギャノン消滅に巻き込まれなかったレベルがいた場合、かなり危険な存在だ。カオルたちは閑岱に連れていった方がいいのではないかという意見がでている」
 鋼牙は難しい顔をしている。
「カオル、零や邪美たちと話したいことがある。ちょっと待っていてくれ」
 そういうと私をゴンザさんに預けて、零くんたちの方へ行ってしまった。
 どうしたんだろう?
 そこへ烈花さんがやってきてくれた。女性の魔戒法師さんも一緒だ。彼女は回復のエキスパートとかで、私たちが怪我をしていないか気にかけてくれたのだ。すごく嬉しい。
 しかも、その魔戒法師さんの服装は古い時代のしきたりを継いでいるとのことで、珍しい文様の服を着ていた。
 鋼牙たちの話が込み入っているらしく、私はその魔戒法師さんから文様の意味を聞いてスケッチをさせてもらっていた。 


 三つ目の文様のスケッチと説明が終わった頃、鋼牙たちの話し合いも終わったみたい。

「カオル、屋敷に戻るぞ」
 その言葉に周囲がどよめく。何なんだろう。
「帰り道は俺とレオも一緒だから、楽しく帰ろうな」
 零くんが明るく言う。
「ゴンザさんは?」
「わたくしはカオル様と一緒です。えぇ、ご一緒させていただきます」
 ゴンザさん、心外だと言わんばかりに返事をする。
 うん、いっぱい心配かけちゃったもんね。帰りは一緒に屋敷に戻ろうね。

「それでは、魔戒騎士たちは魔戒法師たちを一度閑岱に送り届ける。手負いのホラーはそれこそ死にもの狂いだ。気を抜くな」
 雷鳴騎士バロンの称号を持つという方の号令に、他の魔戒騎士さんたちは一斉に「応!」と答えた。
「いいね、私たちも魔戒騎士たちの足を引っ張るんじゃないよ」
 邪美さん……、本当にかっこいいなぁ。
 魔戒法師さんたちも「はいっ!」と、これまた一緒に答える。
 なんか、みんなカッコいい!

「いくぞ、カオル」
 そう言って鋼牙はさっさと歩きだしてしまう。
 えっ、お別れの挨拶も無しなの!
「みなさん、ありがとうございました」
 とっさに出てきたのは、これだけ。もっと他に言葉があったんじゃないかと思ったけど、とにかく鋼牙に置いて行かれたくなくて、私は駆けだした。

 すぐに転びそうになって、レオくんに支えられたけど。