二人は、いよいよ最後の木に立ち向かうことになる。
しかし、その道中だというのに二人は無口だった。
雷牙は今になってカオルの同行を嫌がったのだ。そしてカオルは『私は色彩使いよ!』と、雷牙の今更な意見に怒って先に進んでしまう。
(肝心なときにこっちを安全圏に閉じこめようとするのは、本当に鋼牙ソックリ!)
心の中でそう叫んだとき、彼女はある可能性に気がつく。
(まさか……、鋼牙の隠し子とか!!!)
そう考えると、いろいろと辻褄が合う気がする。
(それなら母親は誰?)
(魔戒法師の誰かなの? 邪美さん? 烈花さん? それとも私の知らない人??)
しかし、要領のいい鋼牙というのは、何か違う気がする。
そこまで計算高いなら、とっくに自分は鋼牙に殺されているはずだ。ホラーの返り血を浴びた時点で。
(まだ、親戚の子の方が納得だわ)
後ろを振り返ると、マスクで顔はわからないが、雷牙が不安げにカオルの後を付いてきている。
(あ〜ぁ、雷牙だったら私が産みたかったなぁ)
そうため息を付いたとき、雷牙の体から発せられる光が強くなった。
それと同時に、不自然なくらいの早さで空に暗雲が広がり、ガープ博士のところにある『青い木』の上空が台風の目のようになっていた。
明らかに雲は意図的な要素で動いている。
──やつガ来ル。
「まだ『木』にたどり着いてないのに?!」
──風デ魔ヲ閉ジコメテイタがーぷ博士ガ外ヘ出タンダ。魔竜ハ自由ダ。
このとき、『青い木』が上空に向かって爆発した。
雷牙が雷剛とともに、急にカオルの前へ出る。すぐさま衝撃音が雷牙の体から発せられた。彼は何とか堪えて、カオルを守る。
魔竜は幻のように透けていた。
(早く青い光を!)
カオルは『木』の方を見た。魔竜は攻撃するときは実体化して、防御の時には透明化する。そんな敵にどう対抗すればいいのだろうか。
勝手に動けば、確実に雷牙が不利になる。
何度か雷牙は雷剛に乗って、魔竜に攻撃を仕掛ける。そのうち、雷剛の体に魔竜の爪が刺さった。
雷牙が投げ飛ばされる。
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