『色彩使い、ありがとう』
風ライオンに、そう言葉をかけられるまで、カオルはガープ博士の家の前でずっと泣いていた。
『ドンキルは無事だ。再び風が動く』
空を見上げると、美しい青空だ。光が空中で舞っているかのように見える。
そこへガープ博士がやってきた。大カタツムリのソウルが戻ってきたという。
『色彩使い、紹介しよう』
二人に促されて、カオルは階段を下りる。
どれくらい泣いたのかわからないが、今の自分は見られたものではないと彼女は思った。
しかし、やはり島中の人たちから慕われ、頼られている存在には会ってみたい。
そして実際に会ったソウルは、カオルの想像以上に大きかった。
ソウルは顎髭をさすりながら、優しい目でカオルを見ている。
『扉は正しい鍵でこそ開く』
ソウルの言葉に、カオルは「はい」と答えた。
さて、不安定だった島の状態が安定してくると、今度はカオルの帰り道の確保が大変だった。今まであらゆるところに開いていた時空の穴が、消え始めているのだ。だからといって、カオルとしては危なそうな穴には飛び込みたくはない。
ということで、島の住人総出で穴探しとなった。
そして、たぶんこれだろうという穴を見つけたのは、やっぱりクリオンだった。
そこはタム婆のいる場所の前だった。
カオルは穴に飛び込む前、タム婆に絵筆を壊してしまったことを詫びる。
するとタム婆はニコニコとしていた。
『お前さん、よく似ている』
「えっ??」
どういう事かと聞き返そうとしたとき、穴が突如として大きく広がった。
「ま、待って!」
そして穴はカオルを飲み込んでしまう。その後を魔戒竜の稚魚であるカオル(仮)が追った。
島の住人たちの一部は好奇心にかられて穴をのぞき込んだが、カオルとカオル(仮)の姿はもう見えない。
タム婆はキセルを口から離すと、細く煙をはいた。
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