そのうち、『木』の方から音が響いてきた。
行ってみると雷牙が内側から扉を開けている。
「雷牙、何処から入ったの?」
──窓、開イテイタ。
どうみても人の手の届かない場所にある窓。どうやら雷剛に乗って、そこから入ったらしい。
恐ろしいほどの機動力である。
慎重に中に入ると、一階には何もない。
ということで二階に上がってみると、やはり奇妙な者たちがいた。それもニ体である。
(どうしよう!)
広い空間ではあるが、戦闘能力がゼロに等しい自分では、雷牙の足手まといにしかならない。
ところがそのとき、『木』の中で音が響いたのである。
敵対者は片方が動けなくなっている。
(誰かが角笛を吹いている?)
素早く雷牙が攻撃を仕掛けるが、動ける相手も機敏なので決定打にならない。
カオルは片方が止まっている隙に、赤い光を探す。
カオル(仮)も素早く周囲を泳いだ。
そしてカオル(仮)が赤い光を見つける。
(よかった!)
では何を描くべきか。
カオルは祈りを込めてあるものを描く。
(攻撃力を! 鋼牙の持っていた赤鞘よ)
そして雷剛には赤いたてがみを。
(鋼牙!! 力を貸して!)
彼女は約束の地に旅立った最愛の人に祈る。
するとさっきまで苦戦していた雷牙の動きと攻撃力が、格段にアップ。雷剛の早さもスゴいことになっている。
勝負はあっさりと雷牙が勝った。
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