『木』の中は何もなかった。ただ、四方を囲む壁とべらぼうに高い天井があるだけ。
「ここにも何かいるのかしら……」
カオルは床の一部分が白く光っていることに気がつく。
「なにかしら?」
そこまで移動しようとしたとき、雷牙が叫ぶ。
──アブナイ!
雷牙に突き飛ばされてたカオルは、そのまま床の上を転がった。上から大きな何かが落ちてきて、床を打ち砕く。
「痛〜っ」
カオルが頭をさすりながら目を開けると、すでに雷牙とわけの分からないものが戦闘状態になっていた。
カオルは周囲を見回す。空中に逃げてしまう敵に、雷牙の攻撃は届かない。
ジャンプ力が足りないのだ。
(あの白い光!)
あれで絵を描けば雷牙の力になるのだ。彼女は周辺を見回すと、壁の方に固まっている瓦礫に白い光が漏れていた。
(あった!)
カオルは駆けつけると瓦礫をどかす。重いものもあったが、とにかく雷牙を救うのに必死だった。そうして彼女は光に絵筆を近づける。
光は絵筆の方に移動、そして次に白い光で空中に翼の絵を描いた。
「雷牙、あなたの翼よ!」
真っ白い翼が黄金騎士・雷牙の背に現れる。今度は真っ白い翼が、彼の動きを助けてくれた。
雷牙の剣が敵を倒す。
このとき、敵の体が光に包まれて、真っ白い石版になって床に落ちた。それと同時に瓦礫もビルディングも消えてしまう。
カオルは安心して、その場にしゃがみ込んでしまった。
いつの間にか背中の翼をどこかに消して、雷牙がカオルのもとへやってきた。手にはしっかりと石版を持っている。そして彼は前回と同じように、石版を光にして体の中へ入れる。
カオルはこのとき、その石版の上の文字が読めたような気がした。
しかし、何故そんな文字が書いてあのだろうか。
白夜と……。
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