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五ツ色の絵物語 その5

 『木』の中は何もなかった。ただ、四方を囲む壁とべらぼうに高い天井があるだけ。
「ここにも何かいるのかしら……」

 カオルは床の一部分が白く光っていることに気がつく。
「なにかしら?」
 そこまで移動しようとしたとき、雷牙が叫ぶ。

──アブナイ!

 雷牙に突き飛ばされてたカオルは、そのまま床の上を転がった。上から大きな何かが落ちてきて、床を打ち砕く。
「痛〜っ」
 カオルが頭をさすりながら目を開けると、すでに雷牙とわけの分からないものが戦闘状態になっていた。
 カオルは周囲を見回す。空中に逃げてしまう敵に、雷牙の攻撃は届かない。
 ジャンプ力が足りないのだ。
(あの白い光!)
 あれで絵を描けば雷牙の力になるのだ。彼女は周辺を見回すと、壁の方に固まっている瓦礫に白い光が漏れていた。
(あった!)
 カオルは駆けつけると瓦礫をどかす。重いものもあったが、とにかく雷牙を救うのに必死だった。そうして彼女は光に絵筆を近づける。
 光は絵筆の方に移動、そして次に白い光で空中に翼の絵を描いた。

「雷牙、あなたの翼よ!」
 真っ白い翼が黄金騎士・雷牙の背に現れる。今度は真っ白い翼が、彼の動きを助けてくれた。
 雷牙の剣が敵を倒す。
 このとき、敵の体が光に包まれて、真っ白い石版になって床に落ちた。それと同時に瓦礫もビルディングも消えてしまう。
 カオルは安心して、その場にしゃがみ込んでしまった。

 いつの間にか背中の翼をどこかに消して、雷牙がカオルのもとへやってきた。手にはしっかりと石版を持っている。そして彼は前回と同じように、石版を光にして体の中へ入れる。
 カオルはこのとき、その石版の上の文字が読めたような気がした。
 しかし、何故そんな文字が書いてあのだろうか。
 白夜と……。 


 カオルたちは再び森の大広間に戻ってきた。とにかく連戦というのは、体力を著しく消耗させる。それはカオルと雷牙の両方に言えた。
 そこへ風ライオンが現れる。

『色彩使い、大丈夫か?』

 ここでうっかり大丈夫だと言っては、次の木で雷牙が倒れてしまうかもしれない。カオルは「少し休ませてください」と告げた。島の事は心配だが、倒れては元も子もない。

──僕ナラ大丈夫。

「ダメよ、ちゃんと休憩を取らないと倒れてしまうわ」
 そう言いながらも、実際に倒れたのはカオルの方だった。
 魔界竜の稚魚カオル(仮)が慌てたようにグルグルと周辺を動き回る。 


 見知らぬ世界に鋼牙がいた。
 白いコート姿ではなく、黒い服にマフラーをしている。