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戦闘開始 6

「頼み事って何ですか?」
エウリュディケーの前にお茶を出して、春麗は席に着く。貴鬼も緊張した面持ちで、彼女の事を見た。
「実は明日後まで、人を預かって欲しいのです」
予想もしなかった内容に、春麗と貴鬼は顔を見合わせた。
「誰か連れてきたのですか?」
席を立とうとする春麗をエウリュディケーは止める。
「いいえ、その……私と同じような立場の方なのです。
少々私の方に問題がありまして、その方たちを保護出来ないのです」
「方たちって、一人じゃないのですか?」
「女性が二人です」
しかし、彼女は直ぐに了承した。
エウリュディケーが自分を信じて頼みに来たのである。 断る気は無かった。
「ありがとうございます」
エウリュディケーはほっとした表情で、頭を下げた。
直ぐさま春麗は自分の部屋に、エウリュディケーを案内する。
「それでは、失礼いたします」
エウリュディケーは春麗の布団の上に、手をかざす。
すると金の髪の少女へと変貌を遂げた。
「あっ!」
貴鬼はその少女を見て、驚きの声を上げる。
(あの時の女海闘士!)
忘れる筈もない顔を見て、彼は心臓の鼓動が早くなった。
(何で!うわ〜っ、訳が分からないよぉ〜。ムウさまぁ〜〜)
自分をこてんぱんに伸してくれた敵だが、エウリュディケーが頼むと頭を下げたのである。
貴鬼は複雑な気持ちになった。
「貴鬼ちゃん、どうしたの?」
「何でもないよ」
彼女は貴鬼の対応を不思議に思いながらも、エウリュディケーを老師の部屋へ案内した。
「どうしよう〜」
彼は何かとんでもない事が起こる予感がした。
(でも、ムウ様や老師はオイラを信じてここに来させたんだ)
貴鬼はもう一度眠っているテティスを見ると、春麗の後を追って部屋を出た。
テティスの手が小さく動く。

貴鬼が老師の部屋に入った時には、既に見知らぬ少女が横たわっていた。
「あれっ?」
貴鬼は少女の顔に見覚えがあった。
「この子、瞬に似ているね」
それを言われて、春麗も納得したような顔をした。
「瞬さんの家族の方かしら?」
「違うよ。瞬は日本人だけど、この子はそうじゃ無さそうだよ」
他人の空似だろうが、何か不思議な繋がりを感じずにはいられない二人だった。
「それでは、春麗さんにお弟子さま。宜しくお願いいたします」
エウリュディケーは深々と頭を下げる。
「任せてください」
春麗はエウリュディケーに心配を掛けまいと明るく答えた。