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「頼み事って何ですか?」 エウリュディケーの前にお茶を出して、春麗は席に着く。貴鬼も緊張した面持ちで、彼女の事を見た。 「実は明日後まで、人を預かって欲しいのです」 予想もしなかった内容に、春麗と貴鬼は顔を見合わせた。 「誰か連れてきたのですか?」 席を立とうとする春麗をエウリュディケーは止める。 「いいえ、その……私と同じような立場の方なのです。 少々私の方に問題がありまして、その方たちを保護出来ないのです」 「方たちって、一人じゃないのですか?」 「女性が二人です」 しかし、彼女は直ぐに了承した。 エウリュディケーが自分を信じて頼みに来たのである。 断る気は無かった。 「ありがとうございます」 エウリュディケーはほっとした表情で、頭を下げた。 直ぐさま春麗は自分の部屋に、エウリュディケーを案内する。 「それでは、失礼いたします」 エウリュディケーは春麗の布団の上に、手をかざす。 すると金の髪の少女へと変貌を遂げた。 「あっ!」 貴鬼はその少女を見て、驚きの声を上げる。 (あの時の女海闘士!) 忘れる筈もない顔を見て、彼は心臓の鼓動が早くなった。 (何で!うわ〜っ、訳が分からないよぉ〜。ムウさまぁ〜〜) 自分をこてんぱんに伸してくれた敵だが、エウリュディケーが頼むと頭を下げたのである。 貴鬼は複雑な気持ちになった。 「貴鬼ちゃん、どうしたの?」 「何でもないよ」 彼女は貴鬼の対応を不思議に思いながらも、エウリュディケーを老師の部屋へ案内した。 「どうしよう〜」 彼は何かとんでもない事が起こる予感がした。 (でも、ムウ様や老師はオイラを信じてここに来させたんだ) 貴鬼はもう一度眠っているテティスを見ると、春麗の後を追って部屋を出た。 テティスの手が小さく動く。 貴鬼が老師の部屋に入った時には、既に見知らぬ少女が横たわっていた。 「あれっ?」 貴鬼は少女の顔に見覚えがあった。 「この子、瞬に似ているね」 それを言われて、春麗も納得したような顔をした。 「瞬さんの家族の方かしら?」 「違うよ。瞬は日本人だけど、この子はそうじゃ無さそうだよ」 他人の空似だろうが、何か不思議な繋がりを感じずにはいられない二人だった。 「それでは、春麗さんにお弟子さま。宜しくお願いいたします」 エウリュディケーは深々と頭を下げる。 「任せてください」 春麗はエウリュディケーに心配を掛けまいと明るく答えた。 |
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