☆ |
|
| ☆ |
「では、健闘を祈る」
教皇代理であるアイオロスに言われた瞬間、俺の思考が一瞬止まった。 この人は何を考えて、そんな事を言うんだ? 俺に何をしろと言うんだ!! 「健闘って……」 俺は思わず呟いた後、自分の顔が火の様に熱くなったのを感じた。 まさか、そういう事なのか? |
『老師は聖域へ行かれた……』
|
一人立ちという言葉は、正直言ってショックだった。
確かにもうそろそろ一人で生きると言う事を考えても良い年齢かもしれない。 でも、ここに居たいと言う気持ちも強い。 老師もここに残る事は許してくださるだろう。 でも、その時、春麗を娶る事まで許してくださるだろうか? 否、それ以前に春麗が自分を受け入れてくれるだろうか? |
今までは朧げでしかなかった自分の未来像。
いつ果てるか判らない宿命を持つゆえに、今までは避けていた問題だった。 でも、何時までも避け続ける事が出来ないという事が身に沁みる様になった。 以前、春麗を一度、独りぼっちにさせた事がある。 その時は、彼女はずっと此処に居ると思っていた。 彼女を縛りつけたくはないと思いながら、俺は彼女が此処に居る事を望んでいる。 でも、それは間違いだ。 俺は春麗をまだ、捕らえていないのだから。 小鳥を捕まえたいのなら、その網の目は細かくしていないと小鳥はくぐり抜けてしまう。 それに、彼女が傍に居ない未来は欲しくない。 どんなにワガママだと言われようとも、やはり彼女にいて欲しい。 例え自分が再び戦場へ向かう為に、彼女をここへ置いてゆく事になっても……。 |
「……聞いてみようか……」
口に出した時には、半分以上決意が固まっていると言う。 しかし、今日は春麗の誕生日なのに? でも、だからこそ聞いてみたい。 今、動かなければ、きっと何時までも動けないだろう。 俺は逸る気持ちを押さえて春麗の部屋へと赴いた。 |