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玲瓏 その1
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自分は大切な存在を守るために闘っていた。 生命を、小宇宙を燃やして……。 なのに戦況が長引くにつれ、己の中で何かが壊れようとしている。 何故、闘っているのか。 痛みも悲しみも感じられない。 ここで終わりにすれば楽になれる。 ここで敵の一撃を身体に受ければ全ては終わる。 だが、実際は自分の一撃が相手を滅していた。 また生き残った。 これでまた、敵と闘うことになった。 |
「童虎」 親友の声にワシは、はっと我に返った。 目の前に広がるのは、冥闘士たちの屍。 「……終わったのか」 今、自分が倒した闘士を見る。 「終わった」 そして牡羊座の黄金聖闘士であるシオンに、今回の聖戦で生き残った聖闘士は自分たちだけだと告げられた。 勝ったと言うには、その代償はあまりにも大きい。 『まだ生きなくてはならないのか』 全身の力が抜けてしまい、シオンが咄嗟にワシの体を支えてくれた。 |
封じ込めた冥闘士たちを見張る為、ワシには女神の力により仮死の法『MISOPETHA-MENOS』が施された。 聖戦の記憶を留めている闘士が自分とシオンしか居ない以上、確実にどちらかには未来の為に生き続けなくてはならない。 再び起こるであろう神々との闘いに勝つ為に……。 しかし、今のワシは 『何故、神々と闘うのか』 という疑問を拭えずにいた。 |
不穏な思考を止めて、命じられた事だけを行う。 冥闘士たちを見張る。 だが、再び蘇る事の出来る闘士との闘いは、これから先、幾度行われるのだろうか? 答えは見つからない。 そして何よりも問題だったのは、自分の気持ちが熱を持たなくなってきた事。 女神を失った今、何故自分が此処に居るのかが分からなくなりつつあった。 だが、そんなある日、あの子がワシの許へやって来た。 |