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玲瓏 その1
自分は大切な存在を守るために闘っていた。
生命を、小宇宙を燃やして……。
なのに戦況が長引くにつれ、己の中で何かが壊れようとしている。
何故、闘っているのか。
痛みも悲しみも感じられない。
ここで終わりにすれば楽になれる。
ここで敵の一撃を身体に受ければ全ては終わる。
だが、実際は自分の一撃が相手を滅していた。

また生き残った。
これでまた、敵と闘うことになった。
★★★
「童虎」
親友の声にワシは、はっと我に返った。
目の前に広がるのは、冥闘士たちの屍。
「……終わったのか」
今、自分が倒した闘士を見る。
「終わった」
そして牡羊座の黄金聖闘士であるシオンに、今回の聖戦で生き残った聖闘士は自分たちだけだと告げられた。
勝ったと言うには、その代償はあまりにも大きい。
『まだ生きなくてはならないのか』
全身の力が抜けてしまい、シオンが咄嗟にワシの体を支えてくれた。
★★★
封じ込めた冥闘士たちを見張る為、ワシには女神の力により仮死の法『MISOPETHA-MENOS』が施された。
聖戦の記憶を留めている闘士が自分とシオンしか居ない以上、確実にどちらかには未来の為に生き続けなくてはならない。
再び起こるであろう神々との闘いに勝つ為に……。

しかし、今のワシは
『何故、神々と闘うのか』
という疑問を拭えずにいた。
★★★
不穏な思考を止めて、命じられた事だけを行う。 冥闘士たちを見張る。
だが、再び蘇る事の出来る闘士との闘いは、これから先、幾度行われるのだろうか?
答えは見つからない。
そして何よりも問題だったのは、自分の気持ちが熱を持たなくなってきた事。
女神を失った今、何故自分が此処に居るのかが分からなくなりつつあった。
だが、そんなある日、あの子がワシの許へやって来た。