萌え話V・1 準備 |
明日は新月というとき、聖域に女神アテナから一つの命令が下った。 |
萌え話V・2 意外な客人 |
とはいえ、女神が神殿にいるのに黄金聖闘士たちが全員聖域から離れるのである。 この命令を彼らとしては素直に聞き入れるわけにはいかなかった。
その理由としては「御身が心配」と考える者もいれば、「何か面倒なことをしでかすのでは!」と考える者もいたり、様々なのだが……。 しかし沙織は彼らの心配に対して、「では、女性聖闘士たちに一緒にいてもらいます」と言うのみで、やはりハッキリしたことは答えてくれない。 こうなると彼女から何かを聞き出すというのは不可能に近い。彼らは諦めざるを得なかった。 ところが翌日の昼近く、一人の少女が教皇シオンに連れられて聖域へとやって来た。 「こんにちは」 その少女とはキグナスの聖闘士である氷河の恋人、相沢絵梨衣である。 日本は夕方の6時近くになっていたのだが、シオンが反則技とも言うべき「瞬間移動」で彼女を連れてきたのだ。 しかし、シオンもまた沙織から聖域から離れるよう言われている。 「聖衣を使って人形遊びでもするのか?」 デスマスクの言葉に他の黄金聖闘士たちは苦笑いしたが、この徹底さに彼らは不安を感じていた。 |
萌え話V・3 作戦?? |
「絵梨衣ちゃんがここにいるということは、もしかして美穂ちゃんが皆の世話をしているのか?」 星矢の問いに絵梨衣は頷く。 沙織が何をしようとしているのか全然分からないが、絵梨衣まで引っ張りだせば美穂が大変なのは察しがついた。 しかし絵梨衣は大丈夫だと答えた。 「沙織さんから、役に立つ男手を用意すると言われたから」 その返事に星矢はドキリとした。 (俺、何も言われていないぞ!) もしかして誰か他の人間が美穂のサポートをするのだろうか? 次に日本へ行って星の子学園へ行ったとき、 「今度はこの人に頼むから、星矢ちゃんは心配しないでね」 などと言われたら、ハッキリ言って立ち直れないかもしれない。 もうそこに自分の居場所がないのだ。 どうにかしなくてはと星矢が真っ青になっていると、そこへアイオリアがやってきた。 「星矢、日本へ行くぞ」 「えっ?!」 「お前を星の子学園へ置いていけと言われたからな」 アイオリアに襟首を掴まれて、星矢は絵梨衣の前から去る羽目になった。 (あらあら……) 星矢が手伝ってくれるのなら、美穂も嬉しいだろう。 ちなみに絵梨衣は今回、『沙織お嬢さんに呼ばれたから、ちょっと言ってくる』という言い訳をして聖域にきたのだった。 |
萌え話V・4 新月の晩 |
教皇の間に並んでいるのは、十二体の黄金聖衣と天馬座、白鳥座の青銅聖衣(神聖衣になった過去あり)、他数体の白銀聖衣たち。 そこへ沙織がニケの杖を、教皇の座る椅子に立てかけた。 「さて、準備は整いました。私たちは隣の部屋へ行きましょう」 一緒にいた魔鈴とシャイナには、沙織の行動の意味がわからない。 しかし、それについて女神に直接は尋ねにくい。面倒なことにならなければ良いがと、二人は思った。 そしてこのあと女性聖闘士たちは、ものすごい脱力を味わう。 なんと、この日の夜、ニケの杖がいきなり聖衣達に「尋問+説教」をし始めたのである。 ちなみに沙織とユリティース、そしてエスメラルダと絵梨衣はファンタジーを見ているような気持ちになっていた。 |
萌え話V・5 教皇の間での大混乱 |
「もしかして、私たちの聖衣も……あのような行動をするのでしょうか?」 教皇の間で行われていることにジュネもまた驚いている。女性聖闘士たちは己が身にまとう聖衣をまじまじと見ていた。 「聖闘士がいなければ、多分、似たようなことになるでしょう」 沙織は楽しそうにニケたちの様子を見ている。 「久しぶりの監査ですから、ニケも楽しそうです」 とは言うものの、ジュネたちには会話の内容は分からない。 何しろニケの杖と教皇の間にいる聖衣たちの周辺には光の微粒子が淡く渦巻いており、その動きで何となくニケが一方的に聖衣達に何かを言っているような気がするだけなのだ。 では、沙織以外の者には分からないのかというと、沙織の他ではユリティースが少し困ったような表情で聖衣達の様子を見ている。 「ユリティースさん、何が行われているのか分かりますか?」 絵梨衣の問いにユリティースが沙織の方を見る。 「あの……、解説してもよろしいのでしょうか?」 聖域の女神にお伺いを立ててみると、沙織はアッサリと了承した。 「聖衣の皆さんはニケ様に自分の聖闘士について説明をしています」 しかし、ニケの方はあまり聖衣達の報告を信じていないらしい。 「どうしてですか?」 意外とハードな展開に絵梨衣はドキドキしてきた。 ジュネたちに至っては、ここにいることに息苦しさを感じる。 ユリティースはどうしようかと迷ったあと、驚くべきことを告げた。 「聖衣の皆さんが、ほぼ毎回、似たようなタイプの方を自分の聖闘士と認めることが問題のようです」 |