萌え話46 勢いで判断している?
 黄金聖闘士が協力する。これは周囲が思うほど単純には喜べない。関わらせるところを間違えると、事態を鎮静化させるどころか破壊し被害を大きくするからだ。

「どなたか魔鈴とシャイナのサポートについてくれませんか?」
 オルフェはダメモトの提案をする。本来、黄金聖闘士が白銀聖闘士のサポートなどあり得ない話である。しかし、全体のバランスを考えると必要不可欠な話だった。二人の女性白銀聖闘士は嫌がったが、オルフェは黙殺する。
「誰もいないなら……」
 アルデバランが手をあげようとしたとき、ミロがそれを制した。
「シャイナは俺がサポートをする」
 いきなりの立候補に他の黄金聖闘士達が驚く。
「ここにはアイアコスが来ているんだ。アルデバランはアレを見張っていてくれ!」
 客に対して酷い言い様だが、アイアコスは特に気にしてはいない。ただ、 (蠍座は何も食わないで働きに行くのか?) と、彼のタイミングの悪さに呆れていた。


萌え話47 流れを止めるのは難しい
「何でミロと組まなきゃならないのよ!」
 勝手に決められてシャイナは激昂する。するとアイオロスが手をあげた。
「ミロが嫌なら俺はどうだ?」
 悪戯っ子のように笑う射手座の黄金聖闘士。 シャイナは眉をひそめた。射手座の黄金聖闘士は何を考えているのか分からないところがある。そんな彼が暴走したら、自分では止められっこない。まだ、ミロの方が交渉の余地がある。

 彼女はミロに「頼むよ」と言った。


萌え話48 誤解いろいろ
「では、魔鈴のほうは?」
 オルフェの言葉にアイオロスとアイオリアが手をあげる。凍りつくその場の雰囲気。しかし、アイオロスは不思議そうに自分の弟を見た。
「……? お前、魔鈴のサポートをしていいのか?」
「えっ?」
 兄の質問の意味が、アイオリアには分からない。アイオロスは腕を組む。
「お前、さっきから女官たちの方を見ていたから、誰か気になる子がいるのだとばかり思っていたから……」
「ち、違う!」
「何だ、女官でないのなら……、まさか未来の人妻か?」
「もっと違う!」
 するとオルフェがアイオリアに対して冷やかな眼差しを向けた。
「ユリティースは僕のものです」
 全然話が進まなくなったので、カノンが仲裁に入る。
「三人ともくだらない話を続けようというのなら、正気に戻すぞ」
 不穏な小宇宙をまき散らし指をポキポキと鳴らし始めたので、三人はそれ以上問答をすることをやめた。

 何か非常に誤解されているのではという状態の末に、アイオリアは魔鈴のサポートにつく。魔鈴は任務を遂行する女性聖闘士として仮面をかぶる。もう、そこには先程までいた少女としての魔鈴はいない。アイオリアはかなり不安になって、彼女に話しかけた。
「ま、魔鈴……」
「何?」
「さっきのは兄さん勘違いだからな」
 言い訳をしていくうちに、アイオリアの顔が赤くなっていく。魔鈴はそんな彼を見つめた。
「……分かっているよ」
「そ、そうか。ありがとう!」
 満面の笑み。魔鈴は言葉を失う
「……頼りにしているよ」
「任せろ!」
 二人は目的地に向かって闇の中を駆けた。


萌え話49 三人以上寄れば
 オルフェの持っている情報では、他の神殿に害をなそうという組織についてはシャイナ・ミロ組と魔鈴・アイオリア組の二つでかなり潰せるはずである。もともと動きがバラバラだし、聖域側から見れば呪術に関わろうとするわりに素人の集まり同然なのだ。
 しかし、そういう組織網からも外れた集団というのも存在する。名前だけ出てくるのだが、実態が掴めないというタイプだ。それゆえにオルフェも自分の判断が過大なのか過少なのか判断が付かなかった。

「この組織は実働用部隊だよ」
 メモに書かれている名前を見てアイオロスは溜息をつく。
「……知っているのですか!」
 するとサガが苦渋の表情で説明をした。
「アイオロスは昔、アイオリアが誘拐されるのではと思い込んで、色々なところに情報網を作っていたようだ」
「だって小さいころのアイオリアは、それ可愛い……」
「もういい。それよりも実働用部隊と言うのは何だ」
「切り捨て用の組織と言うことだ。だからしばらくするとメンバーが変わっていたりする」
 アイオロスはメモに違う名前を二つ書き込む。今度はカノンが眉をひそめた。
「そっちはこの間潰した」
 話を聞いてみると、今回のバーベキューで肉などを提供してくれた村は、この組織に狙われていたという。
「だが、呪術に関わっているようには見えなかったが……」
 カノンの疑問にツッコミを入れたのはアイアコスだった。
「役割分担が違うと言うことだろう」
「役割分担……?」
「組織が大きくなれば、今度はある程度機能を制限しないとグタグタになる」
「……」
 一瞬の沈黙の後、オルフェが口を開いた。
「この名前、見たことがあります。確か聖域の書庫から本を盗んだ者が、こういう名前の人間に渡したとか……」
「人の名前ではなく、組織の名前だったのか……」
 分散していた何かが繋がった瞬間だった。


萌え話50 関係なく動く人々
「毛布を持ってきた〜」
 星矢と瞬と貴鬼が女性陣の人数分、毛布を持ってきた。そしてそれらを配っていると、エスメラルダが申し訳なさそうな表情をする。
「星矢さんたちは大丈夫なのですか?」
 すると星矢と一輝が顔を見合わせた。
「別に夜の冷え込みは慣れっこだよ。夜間訓練もやっているから」
「聖闘士なら異次元に飛ばされたところで、戻って来れる」

 だから心配しなくて良いと彼らは口をそろえた。

目次 / 萌え話 51〜55 に続く