萌え話 21 野外パーティ準備編 |
とある遺跡?にて この日、紫龍は意外なものを見てしまった。 |
萌え話 22 聖域と日本 |
「あっ!」 双魚宮へ向かう階段の上で、ジュネは急に立ち止まった。身につけていたネックレスが留め金のところで切れたのである。 (まさか瞬の身に何か……) 嫌な予感がする。しかし、彼がどこにいるのかわからないし、今は目の前の黄金宮に向かわなくてはならない。彼女はネックレスを素早く拾うと、胸に付けている花に巻き付けた。 (瞬……。無事でいて!) 不安を抱えながら、ジュネは最後の黄金宮へと向かった。 ☆☆☆ 「氷河さん、氷河さん!」 恋人の声で彼は目を開ける。 「絵梨衣?」 「映画、終わったわよ」 周囲を見回すと、観客たちが出口へ向かって歩いている。映画自体は沙織が持っていた株主優待券で入ったので、特に惜しいとは思わない。絵梨衣のほうはというと、人気映画が見れるのは嬉しいし、氷河から映画に行こうと誘われたのはもっと嬉しい。 しかし、実際に見る段階で隣で寄りかかるように眠られては映画鑑賞に身がはいらない。あとで美穂に感想を言うことになっていたのだが、たぶんトンチンカンなものになってしまうのは確実だった。 「いい夢を見たよ」 氷河は大きく伸びをする。 「どんな夢?」 「高嶺の花だった絵梨衣を嫁にもらえる夢」 その言葉に彼女は顔を赤くした。 「あっ……、高嶺の花って……そんなことないわ」 シドロモドロになっていると、氷河が席を立った。 「さて、帰るか」 そういって彼は恋人に手を差し伸べる。絵梨衣を嬉しそうに、その手を取ったのだった。 (しかし、妙にリアルな夢だったな……) 氷河は思い返す。 夢の中の絵梨衣は、聖域にて軟禁状態である女神エリスの巫女だった。彼女を手に入れるには、自分がめざましい働きをしてその願いを言える立場にならなくていけない。そのため、聖闘士だった彼は短期間に魔獣を十数頭倒すという荒技をしてのけた。この働きが認められ、彼は絵梨衣を得ることができた。これは彼女が聖域側の巫女でなかったことも幸いした。 女神アテナに仕える巫女の場合は、このようなことは許されなかったからである。 当時、敵対する女神の巫女ゆえに氷河に与えるという格好がついたのだ。 (でも、あれは何だったんだ?) 絵梨衣を得たときに、誰かが自分のことを険しい眼差しで見ていた。それが絵梨衣に思いを寄せる男の登場を意味する予知夢だとしたらイヤ過ぎる。 氷河は正夢にならないことを願った。 |
萌え話 23 双魚宮編 |
深紅のバラがジュネの胸を貫いたように見えた。花びらが血しぶきのように舞う。 「ジュネ!」 シャイナが駆け寄る。魚座の黄金聖闘士はその様子を冷ややかな眼差しで見ていた。 「シャイナさん……」 「黄金聖闘士相手に勝負を挑むなんて無謀を通り越して、バカとしかいいようがないよ!」 しかし、ジュネは満足そうに薄く笑った。 『私はあなたを乗り越えてみせます』 そう言ってジュネはアフロディーテの前に立ったのだ。すでに二人の間には緊迫したものがあり、シャイナも魔鈴も立ち入る隙がない。そして数秒後、アフロディーテが深紅のバラを放ったのである。ジュネは服のベルトを鞭のように使い、バラを叩き落とそうとした。 しかし、バラはベルトを裂いて、彼女の胸へと突き進む。勝負は一瞬にしてついたのである。 「ジュネ。深呼吸をしろ」 魔鈴の言葉に、ジュネは大きく息を吸う。自ら上体を起こしてみると、アフロディーテのバラは茎の部分が砕かれていた。よくよく見るとネックレスを絡ませた胸の花は、花芯部分が金属で出来ている。造花だとは思っていたが、どうも特別な金属で作られているらしい。しかも、ネックレスのチェーンがその上にかかっていた。 バラはこの二つを砕いてジュネの胸に届くことが出来なかったのである。 「先に進むがいい」 アフロディーテはそう言って、その場から立ち去った。 「……」 ジュネは茎と幾つかの花びらを失ったアフロディーテのバラを手に持つ。アンドロメダ島での粛正では、仕方がないとは言え逃げてしまった。だが、その後悔の念が絶えず、癒えない痛みが彼女の心を苛む。 今も胸は痛い。 しかし、アフロディーテに直接ぶつかったことで、あの時自分が生き延びたことには意味があったのではと思えた。 ☆☆☆ 「試合に勝って、勝負に負けたというところかな」 双魚宮での出来事を神殿から何となく察知していたアイオロスは、楽しそうに笑った。 |
萌え話 24 溺愛する人々 1 |
「不穏な会議の会場にして欲しくはないのですけどね」 ムウは白羊宮へ集まったメンバーを見て、溜め息をついた。 「……すまない」 サガは申し訳なさそうに謝罪する。彼とカノン、そして童虎とオルフェが自分のところの黄金宮へ集まったとき、ムウは貴鬼をユリティースのもとへと行かせた。これはオルフェの不安を思いやったのではない。彼らの話の内容が、貴鬼に聞かせるべきものではないと判断したからである。 「申し訳ありません。これはあまり雑兵たちなどに聞かれては困るものなので、場所の提供を感謝します」 本当は童虎がここにしようと言い出したのだが、オルフェは立場が微妙に弱い(ということになっている)ので、彼がムウに謝意を表した。 「では、本題を始めます」 オルフェが彼らに告げたのは、先の戦いで聖域にやってきた春麗やエスメラルダついての外部の反応だった。 「やはり、ある意味特別な存在というのは、警戒されるか、利用してやろうという反応に分かれるみたいです」 女神アテナを守るために……という大義名分がそこにある為、考え方を変える気がないと言うのが彼の報告だった。 「情報収集をやり始めたらしく、あと数年もすれば見合い写真が送り付けられてきますよ」 本来ならばそのようなことは許されるわけがない。何しろ彼女たちは黄金聖闘士が保護をしているのだ。彼らの許可なくば勝手な振る舞いなど出来ない。 しかし、遠謀な計画が練られていれば、いつの間にか彼女たちを向こうに取られている可能性もある。禍の芽は早めに摘まなくてはならなかった。 「向こうが過ぎた真似をしないように、シメる必要がありますね」 ムウの言葉に他の黄金聖闘士と海将軍が頷いたので、オルフェは苦笑いをするしかなかった。 |
萌え話 25 溺愛する人々 2 |
「お前たち、何を血なまぐさい話をしている」 部屋の入り口から聞こえてきた声に、彼らは顔を向ける。そこには教皇シオンが立っていた。 「何じゃ、おぬしは教皇の間にいるのではなかったのか?」 童虎の言葉に教皇服姿の彼は平然と答える。 「今回の黒幕はアイオロスだ。私があの場にいる必要はない」 黒幕という言葉にサガが眉をひそめた。 「──なるほど。外の奴らが小賢しい真似を……」 オルフェから話の内容を聞いたシオンは腕を組む。いくら相手は聖域の協力者だとはいえ、看過することは出来ない内容である。 「なるべく早く善処すべきかと」 サガの言葉にシオンは頷く。 「やはりこれは、私が携帯電話というものを持たねばならぬか」 その呟きに、他の者たちが「えっ?」という顔をした。 「携帯電話……ですか?」 オルフェも意外な言葉の登場に目を丸くする。するとシオンは平然と答えた。 「そうだ。女神からもミホとエリイの身辺には気を配ってくれと言われている。だから、たまに文通はしているのだが、何しろ時間が掛かるのだ」 彼女たちが日本にいるときはグラード財団の方で何とかするとは思うので、この場合は聖域側の方で何か察知したら沙織に連絡をしてくれと言うことではないかと聞いている方は理解したのだが……。 シオンが直接、文通という手段を使ったのは荒技としか言いようがない。 「……シオン様。携帯電話は小宇宙による通信と違って、偽装が簡単です。あれは契約書類上の所有者については証明可能ですが、実際に使用している人間の証明は、相手に対する信用が基本形です」 オルフェの意見にシオンは頷くが、童虎たちは何か別世界の話を聞いているような気がしていた。 「それに手紙の持つ良さは捨てがたい……」 この呟きに、「どんな返事を書いているのか」彼らは非常に不安になった。そして次の瞬間、部屋に一人の少年が飛び込んでくる。 「美穂ちゃんからの手紙って何だ!」 人馬宮から白羊宮へ猛スピードで駆け下りてきた星矢が、シオンの話を耳にしたらしい。大事な幼なじみの名前が聞こえてきたのだから、気にするなと言う方が無理。これにより、白羊宮は一気に騒々しくなった。 「文通か……」 そんな部屋の騒ぎをよそに、サガは妹分とどう交流回数を増やすべきか真剣に思案し始める。 これにはカノンも呆れかえっていた。 |