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秘密 その1

それはやや緊張に満ちた質問だった。
「瞬は何故、女神と聖域に向かうと決めた時、ジュネに協力を求めなかったのだ?」
師であるダイダロスの言葉に、瞬は直ぐに返事が出来なかった。
自分にとっては重大な理由があるのだが、それを師が理解してくれるとは思えない。
「瞬はジュネが敵だと判斷したのか?」
ダイダロスの見当違いの意見を、彼は思いっきり否定した。
「あの時のジュネさんは僕の身を案じてくれていました。
その行動が女神の戦力を削ぐために行われたモノだとは思っていません」
「しかし、少なくともジュネを説得できれば、戦況は有利に働いたのではないか?」
多勢に無勢という状況だったのだ。
一人でも仲間がいた方が、色々と女神の安全は図れた筈。
師匠の言葉は正論だった。
★★★
「瞬は、ジュネを戦力として考えられないのか?」
それはジュネを聖闘士と認め聖衣を与えたダイダロス自身をも暗に非難する言葉だった。
これに対して瞬は反論をする。
「違います!」
「どう違うというのだ?」
「僕がジュネさんを連れて行きたくなかったんです」
瞬は感情が高ぶってしまい大声を出す。
ダイダロスは弟子の様子をじっと見た。
瞬も又、観念したように自分の気持ちを話し始めた。
★★★
「あの時、僕は聖域に向かう飛行機に乗る直前まで、ジュネさんに訳を話して自分たちの味方になってもらおうと考えていました」
「……」
「でも、そう思う反面、僕は彼女には安全な場所にいて欲しいと思ったのです」
瞬は拳を握る。
ダイダロスは弟子の厳しい表情をじっと見た。
「瞬。それはジュネの存在を否定する事だぞ」
「判っています。
ジュネさんは何一つ悪くありません。
全ては僕が勝手に行った事です」
彼は師匠にそう断言した。