秘密 その2
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ダイダロスとの話が終わり、瞬は外へ出た。 近くの岩場でジュネが訓練をしている。 「先生との話は終わったの?」 相変わらず彼女は仮面をしているが、その声は何処か嬉しそうだった。 「うん。近況報告だけだったからね」 彼は当たり障りのない事を言う。 しかし、ジュネが乱れた髪をかき上げる仕種を見た時、彼の心臓はドキドキした。 (仮面、外してくれないかな……) そんな事を考えてしまう。 このドロドロとした自分の気持ちを、今は彼女に知られたくない。 |
(先生にはあんな説明をしたけど……。 ジュネさんが他の男と行動を共にする事もサポート役になる事も、僕は嫌だ!) 仲間たちが素晴らしい闘士である事は自分がよく知っている。 きっと、ジュネも彼らに対して協力を惜しまないだろう。 しかし、瞬は恋人を彼らから隔離したかった。 もしもという話でしかないが、彼は今でも天秤宮で氷河を蘇生させるのがジュネでなくて良かったと思っている。 『瞬、私が彼を救うわ』 そう言われたら、自分はどういう行動を起こしていたのだろうか。 ジュネが緊急時とは言え、意識を失っている男の体を温めるのだ! その眼差しが、指先が、自分以外の男に向けられる。 絶対に許せないと思う。 だが、緊急時でも嫉妬心を抑えられないという自分の弱さを、彼はどうする事も出来なかった。 |
(ジュネさんが居なくなったら、僕はどうなってしまうのだろう) 彼女が安全圏に居るからこそ、自分はどんな場所でも戦いに行けた。 でも、両思いとなって彼女との間が密接になりつつある今、彼女と離れている事に不安を感じる時がある。 「どうしたの?」 急に黙ってしまった瞬の様子に、ジュネは仮面を外して首を傾げた。 その仕種もまた、彼の心を騒めかせる。 「なんでもないよ」 瞬は理性を最大限に働かせて、そう答えた。 |
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