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心配 その1
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「パンドラボックスの調子が変?」 ジュネは瞬の近況報告に首をかしげた。 「そうなんだ。 ちゃんと聖衣を入れて閉めた筈なのに、いつの間にか箱が開いているんだ」 その為、目立つところには置けず、彼は今パンドラボックスを隣の部屋に置いていると言う。 「ボックスが壊れているとか?」 「それが分からないんだ。特に変なところも無いし……。 ジュネさん、見てくれる?」 自分では発見できなくても、別の人間が見れば何か分かるかもしれない。 瞬はそんな事を考えて、ジュネを隣の部屋へと案内した。 「あたしに見つけられれば良いけど……」 そう言って彼女が部屋に入りアンドロメダ座の神聖衣に近づく。 その瞬間。 「!」 「ジュネさん!!!!」 ネビュラチェーンがジュネの事を振り払うかのように動いた。 不意の行動にジュネは腕を攻撃される。 そして……。 |
彼女の手をつたう、真っ赤な血。 私はとんでもない事をしたって、気が付いた。 とにかく一目散に部屋を飛び出した。 あの人の悲しむ顔を見たくない。 だって、あの人は彼女のことが好きなんだもの……。 きっと私の事、許してはくれない。 |
『……で?』
真夜中の聖域にて行われている恋愛相談に、乙女座の黄金聖衣はどうしたものかと思案する。 相談者はアンドロメダの神聖衣。 彼女は今、ボロ泣きしている。 昔から乙女座はアンドロメダのお姉さん役だった。 実はカシオペアがいれば説教大会になるのだが、今現在カシオペアは不在なので乙女座は溜息をつく。 これでは何処までアンドロメダを落ち着かせられるか判らない。 『……ほんのちょっと、意地悪をするつもりだったの……』 『今の貴女に、ほんのちょっと意地悪されたら、大概の聖闘士は大怪我するわよ』 乙女座の冷静なツッコミに、ますますアンドロメダは大泣きをする。 『だって……。瞬君ったら、あの人が来ると悔しいくらいに嬉しそうなんだもの!!!』 そう言って彼女は再び泣き崩れる。 こうなると泣きたいだけ泣かせるしかないのだが、はっきり言ってこの処女宮で騒がないで欲しいと思う。 何時、自分の主が瞑想を終えて戻ってくるか判らないから。 |
乙女座自身、聖戦の時に主の命により、アンドロメダの主を守り闘ったことがある。
優しい少年だと思ってはいた。 だが、とにかく年若いので成長株ではあるが、その前に自分自身の使命に潰されなければ良いがと思ったことがある。 その危うさがアンドロメダの母性本能みたいなものを、いたく刺激したのだろう。 だが、自分達の保護意識は独占欲と紙一重でしかない。 それが星雲鎖を持つアンドロメダでは、尚更周囲の人間が怪我をするのは分かりきっていた。 |
『……でも、いくら私たちが強度を高めて聖闘士を守っても、闘士の心はやっぱり人を求めると思うの』
乙女座は静かに語りかける。 『……』 アンドロメダは乙女座をじっと見つめた。 『ところで、確か貴女の主である瞬さんの好きな人って……』 『カメレオンの聖闘士のジュネさん……』 アンドロメダは言い難そうに、小さく答える。 『それでカメレオンは何て言っているの?』 『……自分達よりも向こうの方が付き合いが長いんだから、反対は出来ないって言っている……』 ただ、やはりカメレオンの聖衣もまた瞬の存在が面白く無いらしい。 やはり自分の主を悲しませた男だと言うのが、わだかまりとなっていると言う。 『……それじゃ、貴女は瞬さんにはどうして欲しいの? ジュネさんと別れて別の女の子といて欲しいの? それとも自分だけを見て欲しいの? 言っておくけど、闘士が私たちを必要とするのは闘いの時よ』 |