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そのままの君でいて
〜春麗18歳〜 その15 |
「何だ!
もう元に戻ったのか」 |
「待て!
ワシが行った所で役にはたたんぞ!」 聖域に行って働かされたくはないと言わんばかりの親友の台詞に、シオンはニヤリと笑う。 「役立つかどうかは私が判断する! 紫龍と春麗は、アテナが日本に来て欲しいとチケットを用意して下さった」 そう言って春麗に航空券を渡す。 紫龍は日本へと言われて速攻断りたかったが、教皇シオンの手を介しては自分の独断では断れない。 どうしようかと悩んでいると、ムウが残酷な助け船を出してくれた。 実は今回の黄金聖闘士たちの武術訓練は、ムウは除外されている。 その理由は、彼が修復者と言う役目を持つからである。 そして彼はその役目の性質上、天秤座の武器を他の黄金聖闘士たちよりは多少使えた。 「紫龍は私とこれから出掛けなくてはならないので、その仕事が終わったら私が彼を日本へ連れて行きますよ」 だからチケットは貴鬼に使わせてやってくれと言う。 確かに貴鬼はテレポートが使えるので、飛行機をあまり必要としないが、飛行機に乗ると言う体験をしても良いと、ムウは判断したのである。 貴鬼はちょっと面倒くさそうな顔をしたが、体験しても良いかと割り切って早速春麗といつ行くか相談しはじめた。春麗もムウの頼みなので、紫龍と一緒でなくても嫌な顔はしない。 あからさまに嫌な顔をしたのは童虎と紫龍の師弟のみなのだ。 「では老師、行きましょう」 アイオロスが素早く童虎捕まえる。 「では行くぞ」 そう言って彼らはその場を立ち去った。 |
「さて、私たちも行きますか」
ムウに言われて紫龍は嫌な顔をする。 「紫龍。 タンショウレンバンステークス氏から『男の中の男ゆえ、フリーパスだ。是非会いに来い』と言われている人物が、 そんな嫌な顔をするものじゃありません」 その一言に彼は背筋が寒くなる。 (だから、あの時笑ったんだ!) 自分が『彼らは漢の道を究める為に、日々修行を続ける人たちだから、俺も滅多に会えないんだ』と春麗に言った時の、彼の優しそうな微笑みの理由は、これだったのだ。 「紫龍。あなたもまだまだですね。 切り札は取っておくものですよ」 そんな二人の会話を知らない春麗と貴鬼は、不思議そうに二人の事を見る。 紫龍はこの瞬間、ムウには絶対に勝てないと悟った。 そして勝てないゆえに、彼の『謎の魔獣退治ツアーから怒濤の日本行き』が決定したのである。 「今度はこの間の魔獣よりもパワーは少ないですよ。 知能は高いみたいですが」 そんな攻略知識は、彼にとって何の慰めにもならなかった。。 |
「?」 聖域では訓練の合間に自分の宮へ戻ってきたアフロディーテは、バラ園に顔を出す。 彼は神殿への最終防衛ラインを守る者なので、その場所自体に罠を仕掛けている。 それゆえに、それらが無事に作用出来るように、常に万全の準備をしなくてはならない。 という事で、他の黄金聖闘士たちよりも訓練レベルは甘い方だった。 そして彼が見つけてしまったのは明日にも日本へ送られる鉢植えの松の木。 「なんだこれは?」 色はヲトコ茸に近いが、キノコの傘に可愛らしいフリルのようなものが付いているのだ。 アフロディーテはしばらく悩んだ後、ムウに連絡を取る事にした。 |
〜 終 〜
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