風の遺跡
星矢は崩壊した遺跡を見上げた。
その隣にはユナ。彼女は遺跡への案内役だった。
「とにかく探そう。ここには風のエネルギーを制御するアイテムがあるかもしれない」
彼は瓦礫の上を軽やかに移動する。
ユナもそのあとに続いた。
二人は今、この遺跡を使えるようにしなくてはならないのだ。
──僕の姉弟子のジュネさんが、闇の力についてダイダロス先生からいろいろと教わっているはず。その中には闇の眠りに囚われた人を目覚めさせる方法もあるかもしれない。
しかし、ジュネは行方不明。瞬自身もずっと彼女を探していた。
ところが先日、瞬のもとに独立聖闘士となった魔鈴から荷物を渡されたのである。
「これを今のペガサスの聖闘士に渡しなさい」
それは織物だった。白い花らしき模様が織り込まれている。
そしてこのとき、瞬は驚くべきことを聞かされた。
ジュネの隠れ潜んでいた場所が、世界中に点在する五属性の遺跡の崩壊により、結界と化してしまったのだ。
そのため、彼女は特定の条件下でしか、外部と接触が取れなくなってしまう。
ならば遺跡をもう一度復活させれば、そこから助け出すことが出来るのではないか。その場所と遺跡が連動しているのだから。
魔鈴は「頼んだよ」と言って、再び姿をくらましてしまう。
そこで聖域の聖闘士達は一丸となって、ジュネの救出を行うことにしたのである。
「星矢さん、独立聖闘士って何ですか?」
ユナは疑問を口にしたが、これには星矢も正確には答えられない。
わかっているのは聖域から独立聖闘士への連絡は無理。向こうからの連絡待ちということ。
なぜなら敵陣へ潜入している可能性もあるし、獅子身中の虫を倒す算段をしている最中かもしれないから。
これを邪魔することは許されない。
そして女神アテナはその地位にいる者たちに関わらないよう、他の聖闘士たちに命じていた。
「そういえば、ユナはアクィラ(鷲座)だったな」
いきなりの話の切り替えに、ユナは何事かと驚く。
「そうです」
「実は俺の師匠、魔鈴って言うんだけど、イーグル(鷲座)なんだよ」
初めて聞く話に、彼女はもっと驚いた。
「本当ですか!」
「あぁ、本当だ。でも、魔鈴さんのイーグル聖衣は特殊仕様で、彼女にしか使えない状態だったんだよ」
いつのまにそうなっていたのか、何故そうなのかは先代の修復師だったムウにも不明のため、そのまま聖衣は魔鈴専用扱いになる。
しかし、そうなると鷲座の聖衣が永久欠番状態になってしまうので、新たにアクィラとして作り直されたのだ。
「鷲座という存在には何か意味があるのかもしれない。魔鈴さんのことでユナに力を借りることがあるかもしれない。そのときは頼む」
自分の聖衣の意外な秘密に、ユナは緊張した面もちで頷く。
このとき、遺跡の上空を風が吹き抜けた。
そして遺跡の瓦礫の上で、小さなつむじ風が起こる。
「星矢さん、あそこ!」
ユナは遺跡が風を起こしたことに気がついた。
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