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77. ストレス98. 無駄な夢 の続き)

ワイバーンの冥衣がどのような行動をしているのか。
ラダマンティスは人に頼むわけにもいかず、自分で調べてみた。

─パンドラの説明─
「ワイバーンの長い尻尾にリボンをつけると、とても映えるのだ。
ただ、万事控えめに意思表示をするので、ラダマンティスとの仲が上手くいっているのか、時々心配になる。
そうそう、今度はグリフォンとガルーダもおそろいのリボンと刺繍で飾るつもりだ。
約束の昼寝用クッションも3つ、用意したぞ」

─ユリティースの告白─
「あの日、私は女官の方と町へ行きました。
陽が落ちる前に聖域へ戻ろうと思ったのですが、道に大きな蛇がいた為、足がすくんで動けなくなってしまったのです。
どうしようかと思いました。
そこへワイバーン君が蛇をくわえてどこかへ持っていってくれたのです。
一瞬の事でしたし、女官の方は黒い旋風だと言いましたが、あれは確かにワイバーン君でした。
あの……、この事は、オルフェには内緒にしてくださいね」


─沙織の説明─
「あの時は、ちょうど退屈なパーティに出るためホテルにいたから、ずっと話し相手になってもらいました。
ワイバーンの冥衣は夜の闇にまぎれて地上に来たと言っていましたが、なかなか行動派のようですね。
そうそう、隣りの会場で盗難事件があって、私の推理をワイバーンが立証してくれたので犯人を捕まえることが出来ました。
お手柄だったのに、こっそりと帰ってしまったのは残念です。
そういえば、偶然ワイバーンを見た某富豪のご子息が、もう一度会いたいと言っていましたよ」

─エスメラルダの告白─
「あの……、私が聖域の外れにある花畑に行った時、ワイバーンさんは木陰で寛いでいました。
天気が良い日にグッタリしていたので、水で濡らしたタオルを渡したら喜んでくれました。
日射病だったのでしょうか。
夕暮れになってワイバーンさんは空へ飛び立ったのですが、しばらくして綺麗なお花を持ってきて私にくれました。
すごく嬉しくて、その花を押し花にして大事にしています。
綺麗な夕焼けの空を飛ぶワイバーンさんは素敵でした。
名前はユリティースさんから聞きました。
ワイバーンさんはお元気ですか?」

─絵梨衣の告白─
「あの日は学園の子が一人、迷子になったんです。
夜になっても見つからず、近所の人にも手伝ってもらったのですが駄目でした。
でも、ワイバーンさんがその子を見つけて保護してくれていたのです。
冥衣というのは夜目が利くのでしょうか。
黒い翼竜さんには本当に感謝しています。
ですからワイバーンさんがきた時は、クッキーなどのお菓子でおもてなしをしています。
この間はお友達の分も用意したのですが、駄目でしたか?」

─テティスの説明─
「ワイバーンの冥衣?
あぁ……、最近、海によく来ます。 初めて会った時は、夕暮れの海辺で貝を集めていました。
私が何しに来たと言ったら、一番綺麗な色をした貝をくれました。
何だが怒る気がなくなったのですが、やはり冥衣ですから警戒しなくてはなりません。
ですから、ワイバーンが来た時は立ち去るまで一緒に居ます。
海闘士の仲間との争いは避けたいですからね」

調査結果にラダマンティスはため息をつく。
三巨頭の一人が動いたのだから、当然、他の闘士たちにバレるのは時間の問題だった。
カノンあたりは速攻で冥界に乗り込むかもしれない。
(ワイバーンは何を考えているんだ)
ラダマンティスは自分のそばにいるワイバーンの冥衣を見た。

黒い翼竜はパンドラからもらったクッションを抱えて、幸せそうに寛いでいる。
その尻尾には綺麗な紅いリボンが結ばれていた。
それも複雑な編み目で、簡単にはほどけそうに無い。
(パンドラ様……)
聖闘士でも海将軍でも、相手が怒鳴り込む前に冥衣からリボンを外す必要がある。
その手間を考えると、彼は胃が痛くなってきたのだった。