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自分の弟が生まれたころ、アイオロスは奇妙な『夢』を見た。 綺麗な女性が楽しそうに弟をあやしている。 「その名の通り、なんと立派な子なのでしょう」 弟は誉められているのだが、何か嫌な予感がする。この女性は生まれたばかりの弟を連れ攫おうとしている。 直感に従い、アイオロスは行動を起こした。 「この子の名はアイオリアがいい!」 彼のかなり強引な意見により、親も周囲の大人たちも渋々ではあったがアイオリアという女名前をつける。 これには当時の彼が聖域と関わりを持っていたのが幸いしたのかもしれない。 |
「とにかく、お前の名を男らしいものにしたら絶対に攫われると思った。 だから、こっちも必死だった」 |
「────そうですか、あのライオンの子供はキュベレー様が引き取りましたか」 聖域からの連絡に沙織はほっとした。 日本にいた彼女も、この問題に関しては気が気ではなかった。 偶然知ったライオンの子供は明らかに普通とは違っていたのだが、アイオロスが何とかすると言ったので引き取ったのだ。 まさか女神キュベレーに預けるとは思わなかったが……。 (確かにあの方なら大丈夫でしょう) しかも、女神キュベレー自身が待ち望んでいた雌のライオンである。 これでしばらくの間、女性の聖闘士をライオンに変化させようという気は起こらないだろう。 そのとき沙織はある事を思い出す。 「ライオンの子供でも、猫のように鰹節と一緒に渡すべきだったかしら」 しかし、これはアイオロスも女神キュベレーも理解できない風習だろう。 沙織は持たせなくてよかったと思いなおしたのだった。 |
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