ハインシュタイン城周辺の見回りを終え、 シルフィードは城の厨房にてカップにコーヒーを注いだ。
外で仲間が何かを言っている。
強烈な殺意は感じられないので、緊急事態ではなさそうだと彼は思った。
ただ、珍しいなと心の中で呟いたのだった。
しばらくして、彼はその人物が近づいてくるのを察した。
「……」
バンという音と共に、ドアが荒々しく開かれる。
「何なんだ。あの男は!」
アウラウネのクイーンがやって来るなり怒鳴った。
「どうしたんだ? 何があった??」
「どうしたもこうしたもない!
さっき、アンドロメダの聖闘士が森へやって来たんだ。
ただ、連れていた女がニンフのような気がしたから、よもやこの国に伝わる水の精霊ニクシーではないかと思って確認しようとしたら、いきなり怒りだしたのだ」
シルフィードはカップに注いだコーヒーをクイーンの前に出す。
「ニンフ?? どんな確認をしたんだ」
「ニクシーは服の一部が濡れている。 だから袖口を見ようと触ろうとしたら、いきなり睨み付けたのだ。
アンドロメダは!」
「……」
「たしかにニクシーは巻き髪だといわれているが、一応パンドラ様のところに正体の分からない精霊を近づけるのは避けたい。
この私の判断に、なぜあれほど奴は怒るのだ」
話を聞いてシルフィードは、アンドロメダの聖闘士が怒る理由を何となく理解した。
普通、水の精霊は美人揃いというイメージがある。
それに間違われる女性というのは、きっと綺麗な容姿をしているのだろう。
そう考えたとき、シルフィードの脳裏にある事柄が思い出された。
(もしかして、カメレオン座の聖闘士か?
いや、そんな都合のいい話はあり得ないよな……)
常に仮面をかぶって素顔を曝さない女性の聖闘士が実はとても綺麗な顔だちだったというのは、お見合い話が無くなった今になって発覚するのは何となく作為的なものを感じる。
シルフィードは確認をしたいようなしたくないような、複雑な気持ちになった。
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