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使命・華漣

○ 華漣

 滔星、私の可愛い息子。
 もうそろそろ、貴方に一族の使命を託すわね。
 これは魔戒法師として生きて、そして掟を破ったという罪で放逐された我が一族にとって、悲願とも言うべきものなの。
 今の貴方なら古くさいといって嫌悪しそうだけど、逃げることは出来ない。
 これは呪いでもあるから。

 滔星、すべての命のために魔戒騎士と魔戒法師、そしてそれらを統括する元老院を滅ぼしなさい。
 あれらはもう、この世にあるべきものではないから。
 どうしてなのか。
 それは彼らと出会えば分かるわ。
 彼らは『弱い』の。
 でも、人より強い。
 だから世界は彼らの理屈で守られている。

 滔星、貴方にあらかじめ財力と権力を与えておくわね。
 金城憲水はボルシティにいる限り、結構、便利なヒトよ。
 彼は私を支配しているつもりらしいけど。
 だから可愛いわ。
 貴方が私の言葉をどこまで信じるかはわからないけど、使命だけ忘れなければ、あとはどうでもいいこと。
 いいわね。
 魔戒騎士と魔戒法師、そして彼らを統括する元老院を滅ぼしなさい。

 滔星、貴方にひとつだけ警告しておくわ。
 貴方がこの使命を忘れない限り、私を含めて一族は貴方を守る。
 だけど、この使命を忘れて金城憲水の金と権力を強く望んだときは、潔く滅びなさい。
 ゼドムに食われてもいいし、あぁ、一介のホラーでも良いわね。
 そして貴方は無になるの。
 
 その方が、後腐れがないわ。
 貴方の失敗により、一族の悲願を継いでくれるものを危険には晒せないから。

 滔星、貴方が全てを成し遂げて、王になっていることを願っているわ。
 
 だけど、この言葉をただの夢だと思って蔑ろにしたときは、いずれ覚悟をする間もなく裁きが下される。

 覚エテオキナサイ。


 そして彼は目を覚ます。
 夢ノ中にまで忌々しい母親が出てきたことに、彼は朝から不機嫌だった。