翌日の夕方、一台の車が冴島邸の玄関先に止まる。
「雷牙、鋼牙!」
冴島家当主の妻であり雷牙の母親でもある冴島カオルが、展示会場から戻ってきたのである。その後ろから一人の少女が車から降りる。
少女の名は山刀鈴。閑岱にいる白夜騎士・山刀翼の妹である。
一応、鋼牙は町にいるカオルにも危険がないよう、カオルの展示会の招待券を閑岱に送っていたのだ。
閑岱では次期黄金騎士の母親でもあるカオルの展示会のチケットが来たと言うことで山刀鈴を寄越したのである。鋼牙の思惑を薄々察しながら。
そしてカオルが居間に入ると、ソファーには疲れたようにぐったりしているレオと、その膝ですやすやと眠っている雷牙がいた。
「レオくん……?」
「あっ、カオルさん」
立ち上がろうとする彼をカオルは制した。せっかく息子が眠っているのだ。起こすのは忍びない。
「立たないで。雷牙が起きちゃう」
「すみません……」
レオは軽く頭を下げる。
カオルの後ろから現れた鈴がレオに挨拶をした。
「鋼牙さんなら、元老院に呼ばれたので今は出かけています」
レオに淀み無く説明されて、カオルは頷く。
「もしかして留守番に呼ばれたの?」
「そうみたいです」
彼は曖昧に笑う。昨夜の出来事など、カオルには口が裂けても言えない。
|