○ ☆ーロラの下で 編
最近、何だか男難の相が出ているのではないかとカオルは思った。
やたらと仕事仲間などの男性たちにモテているのだが、あまりにも急激すぎて何かドッキリ系の騙しが入っているんじゃないかと不安になってくるのだ。
それと同時に女性陣のやっかみが厳しい。
こんなにも自分が注目されるというのは、仕事柄嬉しい部分もあるが、プライベートなところでは鬱陶しいことこのうえない。
これが万が一にもイヤな展開になったら、自分も危険だが魔戒騎士である鋼牙に迷惑がかかる。
最愛の人は今は『約束の地』に旅立ってしまったので、素人の人間にどうこうできるわけがないのだが……。
それでも冴島邸を守っている心配性の執事さんを慌てさせたくはない。
町のケーキ屋のオープンテラスでカオルがため息をついていると、男が声をかけてきた。
最初は無視していたが、だんだんとその声の主を思い出した
「零くん!」
「ひどいなぁ、カオルちゃん」
そこにいたのは東の管轄を守る魔戒騎士・涼邑零だった。
「ご、ごめんなさい」
「何か、心配ごと?」
そういって零はカオルの前の席に座る。
すぐさま店員がオーダーを取りに来たので、彼はこの店で一番人気の果物のケーキを注文した。
「さすがだね、零くんは」
「誉めてくれてありがとう。ところで何か心配ごと?」
男の人にこういう話をするべきかと思ったが、女友達では「楽しんじゃえば〜」などと言われているので参考にはならない。この際、男の気持ちを聞いてみようとカオルは思った。
(零くんなら最後まで話を聞いてくれるよね)
カオルは思い切ってここ半月くらいのモテ期について説明を始めた。
三日にいっぺんくらいは誰かしらにデートに誘われること。セレブと呼ばれる種類の人から絵を描いてほしいと言われる。しかし、どうにも下心満載な感じであること。
そんなカオルを妬んで、仕事関係の女性陣から嫌みを言われること。酷いときは身に覚えのない喧嘩を売られたこともある。
それは寸前で他の人が止めてくれたけど、何故、そんな誤解が発生したのか見当がつかなくて困っていること。
「もう、アトリエから出るのもビクビクしちゃって、ここの割引チケットがなかったら引きこもろうかと思っていたの」
割引チケットを無駄にしないのは金銭的に苦労をしたことのある為、それが勿体無いからだ。
話を聞いていた零は周囲を見回す。
(なるほど……)
彼はあることに気がつく。
「カオルちゃん、ちょっとそこにいてくれ」
そういって彼は立ち上がると、スタスタと離れる。
そしてしばらくして、にこやかな表情で戻ってきた。
|