冴島鋼牙が約束の地へ旅立った後、御月カオルは崩壊した冴島邸の跡地によく行くようになった。
執事のゴンザが寂しそうだったのも理由の一つだが、何よりも自分が鋼牙を恋しがってしまいアトリエの方では上手く眠れなくなってしまったのだ。
ということで、彼女はよく冴島邸の近くにあるホテルに泊まる。ここなら冴島家に縁のあるホテルということで、ゴンザもいるし格安で泊めて貰える。
それに鋼牙が自分を守ってくれるような気がしたからだ。
「鋼牙……」
約束の地とはどんなところだろうか?
願わくは、その地に彼を助けてくれる者がいますように。
そんなことを祈りつつ眠りにつく日々だった。
しかし、仕事の関係上アトリエに泊り込むこともある。
鋼牙が戻ってきたとき、情けない状態に自分がなっているわけにはいかない。そう思って自分を奮い立たせるのだが、とにかくアトリエではなかなか寝つけないのが辛い。
こういうときに限って見る夢はグチャグチャした印象で、余計に疲れる。
でも耳をプロペラのように回すウサギもどきの動物が自分を見つけて、ぴょんぴょんと飛び跳ねていりのは可愛らしかった。
目が覚めた後、早速スケッチしてみたが何となく違うような気がする。もう一回会って絵に描いてみたい。
そういえば、その動物がいたのは冴島邸の森だったような気がする。
(今日は時間があるから、向こうに帰ろう)
カオルは手荷物をまとめると、冴島邸へと向かう。
天気は上々。森はきっと綺麗だろう。
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