穏やかな光の降り注ぐ海底神殿の中庭に、一人の海将軍が慌ただしくやってきた。
「まかれた!」
バイアンの第一声に、カノンは溜息をつく。
「クラーケンが何処へ行こうが、構わないだろう」
呆れ返っている筆頭将軍の手には、青い宝石の付いた首飾りが輝いていた。
この首飾りは神殿の奥にしまい込んでも、いつの間にか中庭に戻ってしまうのだ。
これが何度も続くと、さすがに中庭で管理をした方がマシと判断されたのである。
誰がやっているのか見当は付くが、いまさら問うても誤魔化されるだろう。
結局、海闘士たちが首飾りの為に、この場所を整備していたところだった。
そこへイオがやって来る。
「スキュラ、どうだった!」
「駄目だ。逃げられた」
謎の多い、クラーケンの海将軍の行動。
この追跡劇には、リュムナデスの海将軍まで参加していた。
しかし海将軍たちが追跡できなかったというので、海底神殿では彼の行く先について色々な者が飛び交うこととなる。
「テティスは聞き出せないか?」
クリシュナの問いに、テティスは首を横に振った。
「この間のことで、警戒されてしまいました」
結局、男の闘士達は誰一人として、アイザックの苦労を理解してあげられなかったのである。
それでもアイザックの部下達だけは、微妙な意味で上司の受難を労ってくれたのだった。
|