萌え話 6 双児宮編 |
三人は警戒しながら、三番目の黄金宮に入る。 |
萌え話 7 巨蟹宮編 |
──なんだ、お前ら。 |
萌え話 8 獅子宮編 |
「魔鈴が付けたくないなら、このまま獅子宮を通りすぎてくれ」 目の前に差し出されたのは、一輪の赤い花。 魔鈴は相手の顔をじっと見つめた。 「……」 アイオリアの方はというと、そんな彼女の反応にしどろもどろになってしまう。 「その……、無理やり付けるような真似はしたくないんだ」 実力の差から言えば、この瞬間にもアイオリアは魔鈴の髪に花を挿すことは可能である。 だが、彼女が嫌がるかもしれないことはやりたくない。 二人の間にしばし沈黙が流れる。 そしてアイオリアが居たたまれなくなって前に出した手を引っ込めようとしたとき、魔鈴がその花を受けとった。 「!」 彼女は花を胸に飾る。 「綺麗だね。お守りにするよ」 彼女たちが獅子宮を去ったあと、アイオリアは自分の右手を見た。 とても綺麗だった魔鈴。この時ほんの少し触れた彼女のぬくもりを思い出す。 アイオリアは急に自分のしたことを恥ずかしく思い、その場にしゃがみ込んだ。 たが、それ以上に嬉しくて、「今夜、眠れるかな……」と呟いたのだった。 |
萌え話 9 サガお兄さんの事情 |
サガがエスメラルダちゃんを引き取って、しばらくのときの話。 しかし、アンドロメダ島でのファンクラブ?状態の報告みたいです。 ☆☆☆ エスメラルダは「絶世の美女ヘレネの再来」と言われるほどの美少女である。 それゆえ、サガとしては彼女の安全には万全を期したい。神話時代のような愚かしい事態は、それこそ二度とあってはならないのだ。そこで彼は、オルフェに尋ねてみることにした。彼もまた恋人の安全については、細心の注意を払っている。何か参考になるのではと思ったのである。 ある日、その質問を琴座の白銀聖闘士にしてみた。すると彼はしばらく考え込んだあと言った。 「まずはコミュニケーションを取ること。向こうが相談をしてくれないと、分からないことが多いですからね」 やっぱり……と、サガは心の中で呟く。 彼としては弟はいても同い年だし、かなり丈夫な人間である。多少なりとも無茶な手段が使えた。カノンに言わせれば生きるか死ぬかの事態に遭わされるのだが……。 しかし、今度は年の離れた可憐な少女ではどう接して良いのかが分からない。ハードルがかなり高そうに思えた。 「そうか……、何とか頑張ろう」 一応、決意を口にする。それくらいの意思表示はすべきだろう。 すると、オルフェが何かを思い出したように告げた。 「あとは、ダイダロスの極秘文書が参考になるかも……」 「……? 何だそれは」 「聖域に関係する男たちの大部分が恐れるであろう秘密文書です」 アンドロメダ島にいるケフェウス座の白銀聖闘士は知恵者と呼ばれているが、そのような恐ろしい書類を保管しているというのは聞いたことがない。彼は中身の見当がつかず困惑したが、オルフェは真面目な顔になる。 「これだけは約束してください。この話はエスメラルダさんの兄として聞く。双子座の黄金聖闘士としては耳を塞いでください」 あまりにも大げさな条件にサガは一瞬躊躇したが、「分かった」と答えた。 「では、今度ダイダロスに会うことがあったら、『花の本を貸してくれ』と言ってください」 「花の本?」 「暗号ですよ。中身は聖域に関わる聖闘士や雑兵、神官などあらゆる男性陣の『女性の好み』が収録されています。あとは人間関係。この人間がこの女性に近付いたときは下心を疑えという指針になりますよ」 もともと、ジュネを守るためにダイダロスとその弟子たち(瞬は彼女の弟弟子なので除外。多分知らないだろう)が聖域関係者の情報を収集し、使者が何らかの伝令を持って来たときは裏があるか否かを判別していたのである。 特にジュネの外見(顔ではなく姿形レベル)を好みとする男が来たときは、彼女を訓練の一貫として兄弟子たちに預けて絶対に会わせなかった。そこまでやり、なおかつ仮面で顔を隠しているというのに、逆にジュネに興味を持つ人間は居続けたのだ。それゆえダイダロス達の苦労は途切れることは無かったという。 「あと、人間関係を辿ると、どこの誰がどのような人物に頼まれると動くのかも記録されていますから、信じ込むのは危険だとしても参考にはなりますよ」 危険人物を先に消すというのはリスクが高いですから薦めません。 そうオルフェはにこやかに言うが、その調査結果の完成度の高さは信用するに値するだろう。とにかくカメレオン座の聖闘士は訓練生時代、聖域の方でも"とにかく居る"というレベルだったのである。不信感をもたれなかったということは、人を選んで情報を伝えていたのだ。 (ヘレネの求婚者たちのような団結力だな) しかし、アンドロメダ島での場合はヘレネ役の少女を団結の枠外にいる人間(アンドロメダの聖闘士)が射止めた。 確かに彼女の兄弟子達がどんなに割り切れなくても、それが一番良い選択であろう。奇妙な連帯感は騒ぎを大きくしてしまう。 (エスメラルダはフェニックスの許へ嫁がせることになっている) それはようやっと言ってくれた彼女の切ない願いなのである。邪魔はしたくはない。 しかし、彼女が年頃になれば幾つか騒ぎは起きる。それは確定に近い予感だった。 「でも、婿の方は心配する必要はなさそうですね」 フェニックスの聖闘士の無敵っぷりについては、サガは経験上、オルフェは噂で知っていた。向こうの心配はするだけ無駄である。 オルフェの言葉にサガは苦笑いをするしかなかった。 |
萌え話 10 処女宮に入る前に |
実力の差が大きすぎる黄金聖闘士を相手にしては、肝心の服装の機能性は分からないままになってしまう。ということなのか、処女宮の入り口には白銀聖闘士達が待ち構えていた。 ただし、彼女たちが巫女服のため、ダンテ、アルゴル、アステリオンの三名も聖衣をまとってはいない。 「ジュネ。突破するよ!」 シャイナの掛け声にジュネは「はい!!」と、威勢よく答える。そして十数秒後、今度はアルゴルの絶叫が周辺に轟いたのだ。 「あっ!」 「うわっ。すまない!! わざとではない」 通り抜けようとしたジュネを捕らえるべくアルゴルは手を伸ばしたのだが、何を思ったのか彼が掴んだのは彼女の上着の裾。ところが服は簡単に彼女から離れたのである。 一瞬、何が起こったのかアルゴルには見当がつかなかった。薄着になった彼女の白い胸元にピンクゴールドの首飾りがキラキラと輝く。あまり見慣れていない女性聖闘士は、とても可憐だった。そして上着を取られたジュネを見て、彼は自分がとんでもないことをしたのだと気がつく。 ジュネの方は服を取り返すか否か、アルゴルとの距離を測っていた。これは足止めのための手段だと思ったからである。 しかし、他の二人の様子が何かおかしい。 「お前! いくらなんでも、その足止め方法は酷すぎるぞ」 ダンテもまた非難めいた言葉を口にする。アステリオンはというと、硬直しているアルゴルから上着を取ると、すぐにジュネに渡した。 「あいつも結構ショックを受けているから、今回は不問にしてくれ……」 「……分かりました」 彼女は首をかしげながらも上着を着ると、そのまま処女宮へと向かう。魔鈴とシャイナは既にそちらへ向かっていた。 「ダンテ。あまりアルゴルを責めるな」 アステリオンが困惑したように二人の間に入る。 「それよりも、今のことを黄金聖闘士達が気がつかないでいてくれると思うか?」 事実だけをいえば、白銀聖闘士が女性の青銅聖闘士の服を奪ったのである。 ──それは無理。 二人の表情は、そう答えていた。 一方、三人の女性聖闘士達の方はというと……。 「ジュネ。紐の結び方が緩すぎるんじゃないか?」 そういってシャイナはジュネの服装を点検する。 「そうかもしれません。服をつかまれたら、すぐに体勢を建て直すのには便利だと思ったのですが……」 彼女たちの巫女服は、その運動能力を妨げないように作られている。上着が簡単に脱げるのも、それを優先したが故の仕様だったのだ。 |