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春の夢 その2
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夢で会った邪神の巫女。 何度と時代や立場は変わろうとも、きっと自分は彼女に恋をするだろう。 だが、その度に誰かがエリス復活の為に自分から彼女を奪おうとするのではないか。 氷河は朝の夢が現実に起こりそうな気がしてならなかった。 彼は再び絵梨衣の顔を見る。 「絵梨衣は聖闘士である俺が怖いと思った事は無いか?」 不意の問いかけに、彼女は目を丸くした。 「どうして?」 会話の流れが分からず、絵梨衣は首を傾げた。 「氷河さんを怖いと思った事は無いわ。 多分、これからも思わない」 そう言った後、絵梨衣はふと暗い表情をする。 「絵梨衣?」 「ただ、氷河さんが私を置いて何処かに行ってしまう日が来るんじゃないかと思ってしまうと、怖くて仕方がない時はあるの。 氷河さん。その日が来たら、私……氷河さんを探しても良い?」 意外な言葉に、今度は氷河の方が目を丸くした。 「ストーカーみたいで嫌われそうだけど……。 氷河さんが探しても良いと言ってくれたら、少しは安心出来ると思うの」 聖闘士である自分を探してくれる人が居る。 氷河は胸が熱くなった。 「それなら、俺も絵梨衣が居なくなったら探す」 しかし、彼女の返事は違っていた。 「それは駄目。 氷河さんは幸せにならなくちゃ」 恋人の決意に、氷河は言葉に詰まってしまう。 眼を潤ませて微笑む彼女の方が、あらゆる意味で覚悟をしているものが多かったのだ。 しかし、氷河は不服を唱えた。 「それは狡いぞ。 絵梨衣が嫌がっても、俺は探す」 「氷河さん……」 「君を見つけるのが俺の……」 使命だと言いそうになって、氷河は黙った。 こういう時に夢で見た光景を利用するのは卑怯だと思えたからだ。 「……君は俺の宝物だ」 その告白に、絵梨衣はポロポロと涙を零して彼に抱きついた。 約束の証拠とばかりに、氷河は絵梨衣に幾度もキスをする。 その柔らかな頬や唇に……。 絵梨衣は大人しく目を瞑っていた。 |
その日の晩、俺は再び夢を見た。 自分の隣に絵梨衣が居る。 彼女は一面に広がる花畑を見て喜んでいた。 「邪神の巫女として連れて行かれた時から、ずっと薄暗い所に閉じ込められていたの。 広い世界に連れ出してくれて、ありがとう」 その微笑む姿に、俺は彼女を救い出せた事に喜びを感じた。 あの神殿は今や崩壊し、瓦礫の山と化している。 悪夢はもう終わったのだ。 |
俺は彼女を抱きしめた。 そして腕の中に居る彼女の温もりに安堵し、再び目を閉じたのだった。 |
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