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伏兵 その2
ある白銀聖闘士の告白

 世の中には人間の想像を超えた出来事が、結構高い確率で発生するようだ。

 俺たち白銀聖闘士は、女神アテナを連れ去ったという青銅の小僧どもを追うため孔雀座のパブリーンの案内で彼女の故郷に近い土地へ向かった。
 そして案の定、パブリーンは弟子を守るために俺たちを倒す決意を固めた。
 しかし、ここでパブリーンを倒すと、後々が面倒なことになる。

 どう考えても正義はパブリーンの方にある。
 俺はどちらかというと、大教皇とかの発言は眉唾物だと思っていた。
 何しろ俺のまとう矢座(サジッタ)の聖衣の前の所有者は、偽物の教皇に謀られて女神アテナに黄金の矢を放つという事をしでかしたのだ。
 これで俺まで女神アテナに対して害を与えたら、二代にわたって愚か者扱いだ。
 ここは煩く言いそうなアルマーズとバラーゾをどうにかして、仕切り直さないとないと。
 などと考えて、まずはアルマーズを気絶させようとしたら……。

「な……ん……だと……」

 俺とバラーゾとパブリーン。三人ともアルマーズを殴っていた。
  気絶するアルマーズ。うわ〜っ、すまない!


「お前たち、何を考えている?」
 パブリーンの驚きはごもっとも。
 だから俺は説明をした。あいつらは胡散臭いから従いたくないと。
 するとバラーゾがニヤリと笑った。
「シャムがそういう考えとは知らなかったな」
「それじゃぁ、バラーゾはどうなんだ!」
 するとバラーゾがアルマーズを抱えた。
「俺はレチクル座のバラーゾだ。神話の影響は受けない。そして神の影響もだ」
 なんだか、不穏なことを言っているぞ。おまえ……。
「どういうことだ」
「知りたくば付いてこい。ただし、今の聖域に戻れない覚悟が出来るのなら」
 なかなか面白そうな発言だ。
 どうせ俺たちがパブリーンを倒しても信じるのか怪しい奴らだし、青銅の小僧たちがどう動くのか見てみたい。

 ということで、俺とパブリーンはバラーゾに付いていくことにした。


 そして俺たちは知ることになる。
 秘密裏に独立して動く聖闘士達のことを。

 その者たちは聖域が地上にとって害になるとき、速やかに滅ぼす為の準備を行っているという。
 それが古い時代に女神アテナと交わした約束だからということだった。

 面白い。

 しかし、魔女メディアが天空に十二宮を作り上げたとき、隠密行動をさせられるとは思わなかった。
 無理矢理、独立聖闘士たちの仲間になってしまったアルマーズも、運命と割り切って動いている。
 でも、前より生き生きしているのは気の所為か?
 まぁ、天空の十二宮に関しては、天秤座の黄金聖闘士が協力してくれたから何とかなったけど、他の黄金聖闘士たちにバレるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。
 でも、結果として牡羊座と牡牛座が囮をやってくれたらしいから、やっぱりバレていたみたいだ。