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烙妖樹・後日談 一輝が聖域にやってきたのは、魔獣戦から二日後のことだった。 日本でエスメラルダの身に降りかかった災難を聞き、慌ててやって来たのである。 彼の来訪をエスメラルダは喜んだが、瞬は怒られてしまう。 「何故、俺に知らせなかった!」 その第一声に瞬はムッとする。ほとんど初めて見る兄弟喧嘩に、エスメラルダはオロオロとしていた。 「兄さん、無茶をいわないでよ。エスメラルダさんは星矢たちが守り通したし、僕はジュネさんを助けることで精一杯だったんだ」 魔獣との戦いは突発であり開始から終了まで3〜4時間くらいしかない。時間との勝負でもあった。 「……」 「そこまで言うのなら、兄さん」 瞬の目が鋭い光を持つ。 「エスメラルダさんにだけでも連絡を取っておいてよ」 一輝は常に弟の所在をそれなりに察知しているが、瞬の方は兄の行動が読めない。 今回の場合、瞬が聖域に向かうとき、一輝は旅に出ていたのだ。 その不満をぶつけられて、一輝は言葉につまってしまう。 「しかし俺は……」 そう言いかけながら一輝はエスメラルダを見た。 彼女は不安げに自分を見ている。 (エスメラルダ……) 誰かが自分の行動を監視しているような状態は息苦しく思える。 だが、エスメラルダの危機に際して役立たずでは己が許せなくなる。 「……わかった」 一輝は頷くしかない。 このとき瞬は心の中でガッツポーズをし、エスメラルダは不安げに「いいの?」と尋ねたのだった。 |
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