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80. 雑草

ダイダロスが女の弟子を育てることになったと言ったとき、正直言って無理だと思った。
今まで結構な数の弟子を育ててきた神業は認めないわけにわけにはいかないが、 その弟子たちは全員男だ。彼らには無茶な手段も使えただろうが、今度は小さな少女である。
ダイダロスに小さい娘に対するスキルがあるとは思えない。
しかし、私の予想に反してダイダロスは女の弟子と上手くいっていた。

少女は仮面がよく外れてしまうらしく、遠目ではあるが素顔を見ることが出来た。
愛らしい顔をしており、金色の髪には赤いバラの花飾りが似合いそうだ。
だが、実際に彼女の前に立ったことは無い。他人に仮面の掟を最大現に利用されたくはないし、あの少女を殺す気にはなれない。

一度、ダイダロスに問うたことがある。 「女の弟子を本当に聖闘士に育てるつもりか?」と……。
すると奴は頷いた。
「そういう宿命ならば、あの子の命は女神アテナのものです」
自分にそれを止める権利はないと言いたいのか。 結構な話だ。

少女は少しづつ成長する。 この環境ゆえに、少女は雑草にならなくてはいけない。
きっかけさえあれば、彼女は大輪のバラへと変貌するというのに。
少女はまるで生育の難しいバラに見える。
そう感じたとき、私はチャンスがあれば彼女を育てたいと思った。

一度でいい。素晴らしい環境下で成長させたい。
そこで咲き誇る彼女は、きっと私の最高傑作になるのだから。