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縁あって、サガは一人の少女を保護する事になった。 だが、双子の弟しかいなかった彼には、小さな女の子とどう関わって良いのか見当がつかない。 最初はエスメラルダと双児宮で暮らせば良いかと思ったのだが、それについては他の黄金聖闘士たちから大反対を食らった。 「危険な場所に女神ネメシスが関係する娘を置いておくな。 彼女を怖がらせた者は一人残らず罰せられるぞ」 これが全員の共通した意見だった。 しかも夜の女神の一族にちょっかいをかけられると、聖域中が大混乱に陥る。 女神ネメシスがそこまで狭量とは思えないが、さすがに彼らが来訪するたびに人々が動揺するのはサガとしても勘弁してもらいたい。 何よりの自分の中に居るであろうポリュデウケースが、何をしでかすか分かったものではない。 カノンの方はというと、 「完璧主義のお前が側にいたらエスメラルダが衰弱する。 後見役に徹しろ」 と言って、サガが反論を言う前に全部を仕切ってしまった。 そんな事情でエスメラルダは聖域の町で暮らすことになっている。 近くには女官や女性聖闘士たちもいるので、安全面については双児宮よりも確かだった。 「しかし、何もしないというわけには……」 「それは年若い女性に対して、自分が出来る事をわかっている人間の言うことだ。 今のお前では空回りするだけで何の益にもならん」 カノンの的を得た意見に、サガは反論が出来ずにいた。 「とはいえ、俺もどう関わって良いのかわからん。 とにかく協力者を得た方が良い」 「協力者?」 「俺もそうだが、お前もあの子の気持ちを察するという芸当は出来ないだろ」 昔からサガの空回りをカノンは見ていたが、カノンの行動をサガはそもそも理解できていないところがあった。 中立的な第三者が間にいないと、エスメラルダの負担だけが大きくなる。 「そうなると、ユリティースに頼むか……。 オルフェはいい顔をしなさそうだが、女官たちでは完全中立が難しくなる」 「……」 「黄金聖闘士を過剰に敬い、海将軍を常に恐れる女官ではエスメラルダも落ち着かないだろう。 そして女性聖闘士では、常に居ない事も考えられる。 とにかくユリティースに頼みに行くぞ」 「ああ……」 サガは双児宮を出ようとするカノンの後ろ姿を見つめた。 (随分、成長をしているな) 邪悪の化身かと思った十代の頃とは全然違う弟の姿。 サガは胸が熱くなった。 そんな彼をカノンは怒りの表情で振り返る。 「お前は留守番をするつもりか!」 弟に怒鳴られ、サガは我に返る。 そして慌てて駆けだしたのだった。 |
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