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クラーケンの海将軍であるアイザックは、自分の守護する柱の様子を見ていたとき急に筆頭将軍に呼ばれる。 「……」 彼は何となく嫌な予感がしたが、逃げるという発想が無かったので大人しくポセイドン神殿の執務室へ赴いた。 「来たか……」 部屋にはシードラゴンの海将軍が机に向かって書類を見ていた。 「何かあったのか?」 アイザックは緊張した面持ちでカノンに尋ねる。すると筆頭将軍は机の上にある書類を差し出した。 「これは……?」 書類は聖域から海将軍への日本行へ行くための依頼書らしい。 「クラーケンも知っての通り、聖域では先のギガントマキアで何人かの黄金聖闘士が負傷した。そのうち巨人族の攻撃をまともに食らった水瓶座のカミュは、未だに傷の回復が思わしくない」 「……」 改めて聞かされた師匠の様子に、アイザックは唇をかむ。 巨人族がどのような性質を持っていたのか不明な点が多く、師匠であるカミュの怪我が治りにくい原因も本当は違うかもしれない。それでも普通の傷ではないからこそ、小宇宙の力を持ってしても完治に時間がかかりそうなのは容易に想像がついた。 「そこで聖域ではカミュを日本へ湯治に行かせることにしたそうだ」 「湯治?」 「東洋なら地母神ガイアの影響が聖域よりも少ないだろうという女神の判断だ。上手くいくかは実際にやってみないと分からないが、まぁ何もしないよりはマシだろう」 一気に説明されて、アイザックは再び書類に目を通す。 日本で何事も無ければそれに越したことは無い。 (それに日本なら氷河もいるはずだ) 師匠一人で大丈夫だろうが、彼はどうしても嫌な予感が拭えなかった。 「それでカミュにはクラーケンを寄越すと言っておいた。 その書類は建前だから気楽に行け」 「えっ……」 師匠の湯治と海将軍への依頼がどう繋がるのか。 若き海将軍には全然わからない。 「面倒が起こったとき、サポートをしてやれ。話はそれだけだ。土産は適当に美味そうな物を買ってくれば良い」 そのままカノンは用件は終わったとばかりに執務室を出て行ってしまう。 これにより、アイザックは問答無用で日本へ行くことになった。 |
ところが聖域では、師匠が沈痛な面持ちで彼を待っていた。 「お前を巻き込むことになろうとは……」 「いったい、どうしたのですか?」 「実は……温泉ということで教皇と老師が一緒に行くと言い出した。 しかも、あの二人はパスポートの年齢を18才だと申請したのだ!」 だからといって実年齢を書かれても、絶対に信じては貰えない。 「あの二人については放っておくが、何か起こったときは手を貸してくれ」 ──騒ぎは確実に起こるから。 師匠が口にできなかった裏の意味を酌み取って、アイザックは頷いたのだった。 |
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