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「魔鈴さん。椅子を新しくした?」 久しぶりに聖域へ戻った星矢は、師匠の家で真新しい椅子を見つけた。 シンプルで丈夫そうな作りだが、なんとなく聖域の雰囲気には合わない。 どちらかというと日本のキッチンなどで見かけるタイプである。 しかしよく見ると、市販のものとは思えないほどムラのある塗装だった。 「あぁ、それはアイオリアが作ったんだよ」 意外な返事に、星矢は目を丸くしたのだった。 |
元々は、アイオロスが修行の旅に出たいと言い出したのが発端だった。 |
「へぇ〜、アイオリアも器用だなぁ」 「私は何だって良いって言ったのだけど、無理やり選ばされたよ」 「……」 器用というよりも、魔鈴に贈るために最大限の丁寧さで組み立てたのかもしれない。 (しかし、沙織さんも無茶をやるなぁ……) さすがに連続して膨大な数をこなしたアイオロスは気分転換に修行の旅に出てしまったが、椅子を贈られた女官たちから名残惜しそうに見送られたという。 「なんだ。アイオロスは居ないのかぁ」 「明日には戻ってくるらしいよ」 「本当!」 「グラード財団が技術の粋を集めて複雑な組み立てキットを開発したとかで、それが昨日届いたんだよ」 既に何か目的がズレているような気がするが、沙織にとってアイオロスとの技術比べは楽しい事なのかもしれない。 (俺もアイオロスに頼んで組み立て技術を習おうかな……) 真新しい椅子を見ながら、星矢はそんなことを考えたのだった。 |
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