この日、レオの工房に珍しい客がやって来た。
邪美である。
「どうしたんですか?」
ちょうど新しい魔導具の開発をしていたレオは半分驚きながら席を立つ。
「勝手に入って悪かったね」
その妖艶な笑みにレオはドキドキしてしまう。
「それは構いませんが、何かあったのですか?」
そう言いながら彼は邪美の後ろに視線を移す。
「お一人ですか?」
「子供の使いじゃないのだから、付き添いなんていないよ」
その返事にレオは袋から魔導輪エルバを出した。第三者がいないと何か危険な気がしたから。
何が危険なのかは、この際考えない。
『おや、邪美じゃないか。白夜騎士と喧嘩したのかい?』
エルバは早速、軽口を叩く。
「喧嘩ねぇ……、仲良くやっているよ」
『それは何よりだよ』
「また修行の旅に戻るけど、帰るところがあるって良いね」
二人の会話にレオは困ったように曖昧な笑みを浮かべる。
「あの……、何かあったのですか?」
このままでは邪美とエルバの世間話が始まりそうなので、彼は早速本題に入ってもらうことにした。
「あぁ、魔導具を借りに来た」
邪美曰く、結界を張るときにあると便利な魔導具をレオは持っているのではないかと思いやって来たという。
「前もって張っておくということが難しい場所に、ホラーが巣くっているんだよ」
レオはその場所とホラーの性質を聞くと「それならアレがいいですね」と、心当たりのある道具を取りに席を立った。
|