鋼牙オオカミとカオル兎T
面倒な場所にいる面倒なホラーを退治するため、鋼牙、零、レオ、邪美、烈花の五人は協力して物事に当たった。 トップクラスのメンバーで対応したので、瞬殺に近い結末となる。あとは鋼牙が元老院に報告すれば終わるのだが、いきなり邪美が「カオルに会いたい」と言い出したのである。 鋼牙としてはさっさと元老院に報告をして仕事を終わらせたいが、邪美を野放しにするとカオルに何を吹き込むか分かったものではない。 かといって、さっさと帰れと言っても勝手にカオルを連れ出されたら、もっと面倒なことになる。この幼馴染みは特に押しが強いのだ。 ということで、鋼牙は嫌々ながら邪美たちを家に案内した。
「俺たちは帰って良いだろ」 嵐が吹き荒れそうな予感に、零とレオは早速避難しようとした。 だが、鋼牙が「逃げるな」という目で睨む。 魔導輪たちはというと好奇心が先立っているらしく、何やら楽しそうな様子だった。 新築された冴島邸に戻ると、新妻であるカオルがゴンザと一緒に皆を出迎える。飲み物とツマミや食事が既に用意されており、邪美と烈花はカオルとの再会を喜ぶ。 ただし、鋼牙たち男性陣は何か不穏な空気を感じていた。 そして彼は速攻で元老院へ行き、仕事の報告をして家に戻る。 その間、約10分。元老院では彼の“話しかけるな”オーラの凄さに、何か大変なことが起こったのではないかということで、少しだけピリピリしたくらいである。
一方、鋼牙不在の間、カオルも入れて彼らは雑談をする。ゴンザの料理は文句なく美味しい。 「前もって分かっていれば、私も料理を作っていたのに〜」 それが出来なかったのは、少し前まで出版社との連絡事項で右往左往していたかららしい。 この時ばかりは客たち全員、命拾いしたと思った。 そして鋼牙が戻ってきたとき、カオルが思い出したかのように、自分に素敵なファンレターが来たと言って話を切り出す。 「4歳の女の子がくれたの!」 彼女は嬉しそうに話し始めた。 その内容は絵本が面白かったということ、そして握手会であったカオル先生がウサギに似て可愛かったということだった。 「ウサギだって言ってもらえたの」 カオルは素直に喜んでいる。 そしてそれを聞いた面々は、いろいろと思い浮かべていた。 レオの場合。 (たしかにカオルさんはウサギかも。カオルさんの頼みって、小動物のおねだりみたいで断わりにくいんだよなぁ〜) 「そうですね。カオルさんはウサギって感じがします」 烈花の場合。 「小さいからか?」 「烈花さん、ひど〜い」(by カオル) 零の場合。 (ウサギねぇ。ロップイヤー系のなんだか“ぽよよ〜ん”としたところは似ているかもなぁ。でも、何をしでかすか分からないところは小動物かな) 「それは、カオルちゃんが可愛いってことだよ」 このとき彼は、鋼牙の刺すような視線を感じた。 邪美の場合。 「カオルは柔らかそうだからかな。鋼牙もそう思うだろ」
零とレオは逃げ出したかった。烈花は聞かなかったふりをしている。 そして鋼牙は「何故、俺に同意を求める!」という目で彼女を睨んでいた。 邪美と鋼牙の間に冷たい空気が流れる。 その中で魔導輪ザルバが大笑いしていた。 このとき、カオルが鋼牙の座席の後ろに廻ると、彼の首に両腕を回してしがみついた。何やらショックを受けたのか、かなり動揺している。 「鋼牙、私、太った? 重くなった? ダイエットした方がいい?」 そう言って身体を密着させるのだ。 彼はいきなり心拍数が上がる。そしてカオルの身体から甘い匂いがした。 硬直する黄金騎士を見て、邪美は「ごちそうさま」と言った。 〜終〜