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五ツ色の絵物語 後日談1

○ その他 編

 淡い金色の光の中で、五色六枚の石版がくるくると回りながら浮いている。
 そしてその周りを、金色の光がいくつも動いていた。

──幼き者、母を守れたようだな。

 どこからか男性の声が聞こえてくる。一人のような気もするが、同時に複数いるような響きがあった。

──ハイ。

 カオルから雷牙という名を貰った子供が答える。

──デモ、魔竜ヲ逃ガシテシマイマシタ。

 子供は悔しそうである。
 しかし、男は静かだった

──これらの石版は、冴島鋼牙の戦いの歴史を記したもの。お前にとっては教本にはなれど、実践には向かぬ。

──デモ……。

──お前はこれから時が来るまで静かに眠るのだ。そして今までのことを全て忘れる。

──エッ、全部、忘レチャウノ?

──そうだ。石版で覚えた技は付け焼き刃にすぎぬ。お前が後継者ならば、父、冴島鋼牙がその言葉で、その剣で、その生き様で全てを伝えてくれる。

 次々と壊される石版たち。
 子供は少し困惑していた。

──オ母サントノ約束モ、覚エテイタラだめナノ?

──すでに母、冴島カオルはお前と出会ったことを覚えてはいない。

 その言葉に子供は動揺した。

──オ母サン……。

 泣きそうな声で呟く。

──一つだけいっておく。母と子の絆はいくら我らでも故意に切ることは出来ぬ。お前はこれから誕生の時を待つのだ。お前が信じ敬愛する母ならば、きっとお前を産む。

 子供は納得したらしい。
 この世界では一秒も一年も、十年も、たいした差ではない。

──……オヤスミナサイ。オ母サン、オ父サン。

 子供の声はそれっきり聞こえなくなった。
 淡い金色の世界に静寂が戻る。
 今度、雷牙が目を覚ますのは、両親のいる世界に生まれたとき。

『そのときがちゃんと来ますように』

 眠りにつく直前、誰かの祈りの言葉を彼は聞いたような気がした。